[Re:02] Reboot : ゼロから始める OpenFOAM @ windows トイレの換気も頭つかってくれよ その1(二次元編)

もう十数年前、まだエアコンは贅沢品で年額60万円ちょっとの教育研究費予算で、二階の研究室では室外機は屋上設置してください、というお役所ルールで、クレーン工事費でエアコン導入は100万円いるとされていた平成の時代の話です。

いくら配管掃除しても、老朽化した排水管が直ぐ詰まって、男子便所の小便器からは、水洗の水があふれ出し、尿石が詰まるからと水を流しながら用を足すと、とてもここではかけない状況が当たり前だった時代の話です。

当然、トイレはくさくなるので換気が必要です。ところが、優秀な大学からやってきた優秀な教授陣を要する機械系の建物なのに、トイレの開放可能な窓とドアは全開。外からの風で臭気は館内に蔓延しました。特にトイレ横の居室では、その臭気がダイレクトに室内に入ってきました。換気扇を正しく使用しているものにとっては、大変迷惑な状況でした。

そこで、啓蒙もかねて、学部流体工学の試験問題に、もちろん手計算ですが、トイレ内の流れに関連する試験問題を出しました。まぁ、予想通り出来はよくありませんでした。

それから長い年月が過ぎました。私も老人になり、トイレもきれいに改装されましたが、新型コロナが発生して以降、また似たような換気の問題が世の中や報道ニュースバラエティ番組で発生しています。

これを機に、いっちょ openFOAM で計算してみよう、という事例です。

まずはモデルから。

何でこんな形状にしたのか。

XSim の説明をいい加減に読んでしまい、アップロードファイル数が5つ、って思い込んでしまいました。まぁ、それだけではないんですが、それが動機になったのは間違いないです。ちなみに正しくは、アップロードファイルの総容量が 5MB でした。

モデルコンセプト

トイレ室は、図中右上にある横長長方形部分です。それに続く右側エリアは、ドアの外の空間のイメージです。下を横断する流路は、左のチャンバーからの接続流路です。

換気扇は、トイレ室左上にあるという設計です。そこから細いダクトを経て端面に達します。この端面で外向き(左向き)流速指定境界条件を付します。その左には、左チャンバーへの空気吸入口があります。ここを、換気扇と同流速で吸い込み境界条件にしようと考えました。吸い込まれた気流は、チャンバーで減速して、流れに応じて窓とドアに適当に成り行きで分かれるであろう、と考えました。流出入の面数を2つに減らして STLファイル数を減らそうと考えたわけです。

境界条件等

部屋: 横 10 m / 高さ 2 m
換気扇:流出速度 10m/s
吸気口 :自由流出入
流路側面壁および部屋以外の壁面  滑り壁
部屋の壁  静止壁
安定性関係パラメーター:デフォウルト
計算所要時間:数分(2分くらい?)

計算結果

解釈(注:計算条件等は十分には検討されていません、念のため)

見ての通り、左チャンバーからトイレ室左の窓に続くダクトで、気流が速くなっています。大局的に見ると、流路全体で時計回りの流れになっているようです。流路面積の関係で、上述の流路が最も流速が早いですが、流量からいけば、大流量の循環流れになっています。

時間発展を見ると、当初は予想通り、換気扇に流入する流れは、窓(に続くダクト)の上壁に沿った早い流れのみで、それ以外の流速は小さく、流量もそれが多勢を占めていました。しかし、壁面近くの流れの粘性または運動量交換によって、ダクトの速度が上壁面側から加速し始めて、最終的には上図のような結果になってしましました。

チャンバーの容量が小さかったこと、何よりも、窓ダクトの長さが長かったことから、エゼクター(現代の機械工学科では絶語化していますので、各人調べてください)効果によって、どんどん運動量が供給されて、エネルギー損失を上回るエネルギー供給によって、換気扇によって換気される流れを遙かにうわまわる流れ場が形成されてしまったようです。流路を滑り壁にしたことも敗因の一つのようです。

まぁ、失敗計算例としては非常にわかりやすいよい例です。

とはいえ、上述のように、外から風が吹き込んだ場合の最悪のケースの流れのメニズムは、多分この結果の流れと基本的には同じ機構となっている、という意味で、奇しくもその状況が結果として得られています。