[安全] 一般的な工具の形状、名称と使用方法、禁忌事項
むかしは基本的な工具、あるいは道具が家庭にあったように思うのですが、マンションや最新一戸建て住宅時代,すっきりきれいに片付いた現代家庭で、従者はいないまでも電話一本ですべてを専門業者を呼びつけられる状況では、そういうものも必要がなくなってきたのかもしれませんね。だから、こんな状況下で機械系エンジニアを育成するなんて手間暇がかかりすぎて、マトモに育成することは “常識” では考えられないから、、、なのでしょう。
本研究室では15年以上前から、創世記11章の”バベルの塔”さながらに、作業中の工具の受け渡しが困難になってきました。この、機械工学における”バベルの塔症候群(The City Syndrome)“を緩和するためにも、本研究室だけでも、まずは工具くらいの名称、機能、特徴は覚えておくべきとおもいます。最近は派生型も多く製造されていますが、ここではオーソドックスなものを中心に紹介しますので、しっかり工具の名称と使いかたを覚えてください。
無断で意識的に機器を持ち出す人を見つけたら阻止するとともに報告してください。工具や計測機器、ケーブルなどは様々な対応のために保管してあるので、いざというときに使えなければその存在は無意味です。些細な工具でも、本研究室教員に無断で貸し出すことのないようにしてください。もっとも、こんなことを書かなければいけない原因の持ち出す側である黙認している監督者は資質と法令規則知識がなさ過ぎますが、現状、トラブルが発生中なので注意してください。
あと、工具は普通の人間が普通の力で使用するようにできています。締めるときに、体重をかけて締め付ける、というようなことは決してしないでください。緩めるときは、必死で力をかけるより、瞬発力で力をかける方がよいですが、ボルトを切る可能性もあるので、せいぜい拳で叩く程度に押さえてください。
締結具は、締め付けた際の軸力(ボルトとナットの系の内部力)で、ネジ表面の面の摩擦力で締まっているだけです。回転機械では逆ねじもあります。固いときは、本格的に力を入れる前に、回す向きを間違っていないか冷静に考えてください。ほんのコンマ1~2ミリ程度、ボルトがほんの十数度回転すれば、面圧が急減し摩擦力も小さくなり、一気に緩みます。だから、締結解除で力が要るのは最初だけ。アホみたいな力を入れるのではなく、うまく衝撃を与えて少し回せばいいだけです。
古い計測器、機械などでは、ねじ穴がインチねじの場合があります。最初は回るけどだんだん固くなる、、、、という場合は、まず間違いなく、インチねじとメートルねじの組み合わせです。速やかにボルトを抜いてオネジ、メネジのねじピッチを調べてください。ねじによる締結は、力を入れて回すのは最後の瞬間だけ、であることを忘れないように。
ボルトナットで締まっている場合には、ナット側にスパナ等を当てて全体が一緒に回らないようにしてください。素早くスパナを動かすことで、ナットが供回りしないこともありますが、いったん緩めば何かで押さえなければ外すことはできません。
締結要素用
ドライバー
主にネジ要素を脱着する際に利用する。機械要素では、ボルト、ナットを使用することが多いので、特にメートルねじなどその表面にある “ねじ” と区別することを推奨する。ただし、ビスとも呼ばれる小ネジやタッピング、木ネジを含め、締結要素は”ネジ” とも呼ばれているものがあるので、推奨する呼び方は厳密なものではないが、基本的な機械でよく使われるボルト、ナットはその呼称で呼ぶことを勧める。
特に、プラスドライバーとマイナスドライバーは、加えたトルクによってドライバーの軸方向に押し返される力が生ずるので、使用時には、全体重をかけるようにしっかりと押し付けて使用しなければならない。一旦、滑ってしまった小ネジ等は、そのあたまや溝が”舐める”と呼ばれる削れた状態になり、その後の脱着のたびに舐め具合が悪化し、すぐに脱着出来なくなる。また、ドライバーの先端も傷めてしまう。そのため、少しでも舐めたネジは、その場で取り外して廃棄すること。
ドライバーは、差し替え式のものもあり、ドライバー軸の太さも規格にあった必要強度、主にトルクのみに応じた径を持つため、様々な径のものが身近に存在する。そのため、穴あきのボルトを持つシャコマン等を締める作業の際に使いがちであるようだが、そのような使用をした結果、軸がへの字に曲がったドライバーが生じる。軸が曲がってしまったドライバーを回すことの困難さを考えれば、絶対にそのような類いの使用をしてはいけない。
また、先がとがっていることでくさび代わりにしてしまうものもいるようだが、ドライバーを何かに当てて、持ち手をハンマーで叩くことも厳禁。先端が変形するのはもちろんのこと、軸が貫通していて衝撃が圧縮力として先端に直接伝わる”貫通ドライバー(基本は固着ネジを緩めるのに使用)”はよいとしても、普通のドライバーでそのようなことをすると、軸がくさびとなって枝の部分を二つに割って破壊する。
貫通ドライバーを電気器具で使用するときには要注意。通電したままでは、当然、グリップ部分まで電気が届いているものもあるので感電する危険が非常に高い。電気関係の作業は、電気を遮断して行うべきではあるが、機械工作用のドライバーをはじめ、ほとんどの工具が金属製であるという意識、知識がないと、死ぬこともあることに留意。
プラスドライバー
小ネジでは最近、多くのものがプラスになっている。そのネジを締めるためのドライバー。プラスドライバーは、ただ単純に、ビスの頭の溝にドライバー先端を当てて回してはいけない。締め付け、緩め始めの大きなトルクが必要な時には、しっかりと押し付けて回さないと、すぐにネジのアタマの溝を舐めてしまう(図参照)。先端部の大きさに 0 ~ +3 のように種類があるので、アタマの溝に合ったサイズを選択すること。
マイナスドライバー
最近はめっきり使用機会が減り、見ることもなくなってきた小ネジ用の工具。決してくさびでもたがねでもない。プラスビスよりもはるかに舐めやすく、しっかりと適正な溝幅にあったドライバーを使用しても、舐めやすい。特に古いものに使用されていることが多くなった昨今、古いがゆえに、固着していて、緩めはじめに想定外のトルクを要することがある。一旦舐めてしまうと2度と外すことができなくなる。したがって、マイナス溝アタマをみたときには、第一級の警戒態勢で最大の準備をして臨むべきである。最初の一瞬で命運が分かれてしまう。少しでも固いと思った時は、ネジの緩め剤や潤滑剤などを塗布するなど、工夫をして作業すること。もし取り外したなら、マイナスビスはすぐに破棄して、少なくともプラスビスに交換しておくこと。
ボックスドライバー、六角ドライバー
小径のボルトなどでは、スパナ等ではなく、ドライバー形状の方が作業効率が良いこともある。そのような状況に向けて、六角ボルトや六角穴付きボルトなどなどに合わせた先端形状になったドライバー。小型のものでは交換式のものもドライバーセットとして安価で多く市販されている。
トルクス(ヘックスローブ)ドライバー
最近日本でもひろく普及してきたヘックス ローブ用の先端を持ったドライバー。中心の凸部(いじり止め)に対応したものを入手しておく方が汎用性がある。T型が普及。E型は雄雌が反対で、ボルトの頭が星形突起です。電気製品やパソコンなどで使用されているので見ることができる。
スパナ(レンチ、オープンエンドレンチ)
本研究室では、六角レンチ同様必須アイテムのひとつである。多くの設備、装置、空力模型などの脱着、組み立てで用いる。M12程度までのスパナは、各人専用のものを所有しておくことを推奨する。メートル系(mm)と、インチ系が出回っている。表示される数値はねじの規格呼称値ではなく、六角ボルトのアタマの平行な辺の間隔である。下の写真のように分数表記のものはインチスパナです。ISO系は整数表記で mm 単位で表記されています。インチ系のボルトは、機会があればメートル系に交換しておいてください。
スパナ、レンチ類には、ステンレス鍛造でできた上等のものも存在するが、一般には鋳物(ねずみ鋳鉄,普通鋳鉄)でできているので、衝撃に弱い。大きいサイズは重量もあり、ハンマー代わりに使用したくなるかもしれないが、見かけによらずヤワイものなので、決してスパナでモノを殴らないこと。ヒトも殴らないでください。用途以外の使い方は厳禁。
下図は、スパナの合理的な使用方法である。工具は基本的には、手前に力を入れて引くように使うこと。押した場合、勢い余って手を何かにぶつける可能性が高い。押す場合には、手で叩くなど、工夫をすること。また、回転方向とスパナの表裏にも留意すること。固くないときはあまり気にしなくても良く、約15度の偏角があるので、狭いところでは、表裏交互に使うことで六角のアタマを回すことができる。長い方が付け根がふとくなっている。ボルト、ナットを回すとき、六角の頭部の角によってスパナが開く方向に力が生じる。このとき、下図のような場所で大きな力が生じる。先端で力を受けるの方が付け根に生じるモーメントが大きくなり、曲げにより発生する表面応力が大きくなり、変位が大きくなることは、高校までの力学の応用で理解できるのではないでしょうか。したがって、スパナにはナットやボルト頭部はしかり奥まで差し込んで回す必要があります。変形によりスパナの口が開いた場合、あるいはメートルとインチを誤用した場合、ボルトの頭を舐め、角が変形して、さらに舐めることによって、ボルト、ナットだけではなく、工具まで摩耗、損傷させることになる。
きちんとサイズのあったスパナを選択し、頭を奥までしっかりはめ込んでから、力を入れて引いて回すこと。似たサイズのインチスパナも危険、要注意。
図 スパナの回し方:締める場合。緩めるときは裏返す。短いアゴはいつも手前に。
メガネ(メガネレンチ)
メガネは、スパナの口が開く欠点をカバーするため、開口部をなくしたもの。一般に、大きなトルクに耐えられるため、ロングタイプの柄の長いものが多い。したがって、より少ない力でボルトの脱着が可能。ただし、狭いところでは扱いにくいので不便。また、いい加減にはめて使用すると、大きな力をかけやすいが故に、ボルトを舐めてしまうことがあるので注意。さらに、堅く締まったボルトを不用意に大きな力で回そうとすると、ボルトが切れて致命的な事故になる。一本のボルトが切れるだけで、装置は使用不能になることに十二分に留意。
図 メガネレンチ。中段のレンチはラチェット機構が組み込まれている。
側面のボタンで回転方向を変更できる。
下段のワンウェイクラッチのみのラチェットは裏返すことで回転を反転させる。
コンビ(コンビネーションスパナ)
スパナとメガネがセットになったレンチ。両端にそれぞれがセットされている。
ボックスレンチ
六角ボルト、ナットを締結する際に用いられる。メガネのさらに上をいく、すっぽりはめ込んで使用する。ソケット部にハンドルがついて一体化したもの。L形。タイヤ脱着のときなどには慣性を利用して回しやすいT字型のT形、十字型のX形やY形のレンチもある。それぞれの枝の先に異なるサイズのソケットがついていることが多い。
ソケット(ソケットレンチ)
普通、正方形断面を持つはめ込み突起のついたレンチ。突起部分に、交換パーツであるソケットをつけて使用する。一般に、ラチェットのついたハンドルで使用することが多い。突起にも規格がある。
1/4″(6.35mm), 3/8″(9.5mm), 1/2″(12.7mm)
の3種類があるが、セットものドライバーでは規格外のものもある。本研究室では、小さいほうの2種類が基本。
図 自動車ホイールキーナット用ソケット
凹凸のパターンが少し異なる
ラチェット(ラチェットレンチ)
ソケットレンチの取り付ける部分に、ラチェット機構がついたもの。回転が一方向のものは、裏返すことで、脱着両方使えるようになっている、普通は、レバーを切り替えることでラチェットの方向を切り替えることができる。改善されたものでは、ラチェットの歯数を多くして、狭いところでも使いやすいように小刻みにかみ合うようになっているものがあるので、ギア数、送り角、を確認のこと。
図 ラチェットボックスレンチ バーとソケット(1段目)
レバー切り替えによって回転方向を選択(二段目)
自在継手、エクステンションバー、固定バー、T形バー(三段目)
トルクレンチ
レンチの枝の部分に、中折れする蝶番機構がついていて、設定以上のトルクが加わると、その部分がコッキン、と曲がって適正トルクをお知らせしてくれるレンチ。枝(グリップ)の端部に調整用のつまみがついていることが多い。生産現場の工場などでは固定トルクのものが使用されることが多いかも。
図 この写真では分かりにくいが、設定トルクを超えると、カチッ、と音がして、
少しクビが曲がっている。尾部のダイヤルでトルク値を設定する。
六角レンチ
本研究室では多用を心がけている六角穴付ボルトを脱着する際に使用するレンチ。狭い場所でも脱着作業が楽であること、頭を舐める心配が少ないこと。レンチの長さに応じた締め付けがほどよく、破壊工作が発生しにくいこと、などがその理由です。一人ワンセット、常備しておいてほしいアイテムです。
モンキー(モンキーレンチ)
開口部の広さをねじで調整し、複数のボルトに対応できるできる万能スパナ。スパナと同様に、丈夫な固定アゴと丈夫でない可動するアゴがある。可動アゴは、ねじの遊びなどですぐに動いてしまう可能性が高いので、万能とはいえ結構ヤワな構造である。したがって、堅く締まったボルトなどには不向き。ボルトを舐めさせてしまう。スパナ同様の荷重方向を考慮して、可動アゴが浮いて緩まないよう、可動アゴの方に圧縮力がかかり面に押さえつけられるように回転させて使用すること。固定アゴがハンマーに見えるときがあるかもしれないが、決してハンマーではない。
図 モンキーの回し方:固定アゴはいつも手前に
ボックスレンチ
パイプレンチ
流体の機械工学実験を行う本研究室でも、最近はあまり使わなくなった工具。構造はなんとなくモンキーレンチに似ているが、アゴにはパイプに食い込んで滑らないように歯が刻まれていて、適度な遊びによってトルクによる摩擦からアゴにパイプに食い込むような力を発生させる機構で、しっかりと掴んで回すことができるようになっている。適正な直径のパイプに対して適正なサイズのパイプレンチを選択しないと、上述の機構が故に工具の破損や離脱によりけがをすることもあるので注意。回転方向にも注意。
図 プライヤー型のナットレンチ(左)とパイプレンチ(右)
ピボットがプッシュ式になっていて口径を変更できる
フックレンチ
機械加工などの工作機械でよく使われるレンチ。生産技術センターで最も身近に使用するのは、縦フライスのチャック用のフックレンチ。
図 サイズがいろいろあるのでRのあったものを使用すること。
これも基本的には手前に引いて使用する。
チェーンレンチ、ベルトレンチ
パイプや筒状のものに巻き付けて、テンションによる締め付けを利用した摩擦力によるトルクでしっかりと対象を掴み、脱着する際に用いる汎用工具。機構構造的に、非常にうまく考えられている。
最近ではそのような作業をする人は希有になってしまいましたが、かつては自動車のオイルフィルター交換の際に使用したので、車両備え付けの工具の一つでした。整備工場でも、専用のボックスレンチを使うようになったようです。自動車業界では、まもなくエンジンもなくなるようですので、このような工具は見られなくなりそうです。
図 オイルレンチ。自動車オイルフィルター交換用。
工具の使用向き(裏表)に留意。径の調整が二段階でできる(右から2枚目)。
回すときは手前に引くようにする(右端)。
図 ベルトレンチ。この例はゴムベルト。
円筒物体にベルトを巻き、ストッパーで固定、手前に引いて使用する。
パイプのような長物に使用すると便利。
引っ張る向きを間違えると滑りやすくなる。
挟み工具
ペンチ(プライヤー)
比較的万能な工具。ボルトナットを締める際にナットを固定したり、簡単で大雑把な金属曲げや固くなったピンを抜くのにも使用できる。挟むものの大きさによって、ピボット(軸)部分の位置を選択することで開き具合を選択できる。
電工工具
電気工作、作業に使う工具。機械作業工具と大きく違うのは、たいてい持ち手(グリップ)にゴムがついていることである。これは、万が一の感電でも、感電する確率を少しでも下げるためです。滑り止めやデザインだけでついているのではなく、感電の危険のある金属工具であるという意識は常に持ち、安易な操作で通電部分に振れないよう注意してください。電子回路でも電池を外し、コンデンサーを放電し、非通電状態で作業すること。
ラジペン(ラジオペンチ)
電工ペンチ
その名の通り、電工の作業をこの一本でこなすことができる万能ペンチ。機能や適用サイズはペンチによっていろいろな組み合わせがあるので、作業にあったものを選ぶとよい。ニッパー、丸形圧着端子、ギボシ端子、ワイヤストリッパー、ビスカッター、などなど。配線によく使う線の太さやビスの大きさ、使用する圧着端子の種類などを考慮して選択するのがよいと思います。ただし、万能が故に、専用工具には負けるところがあります。
図 この電工ペンチでは、先端から、
丸形圧着端子3種、ビスカッター5種、
イグニッションターミナル用圧着、ワイヤカッター、
ストリッパー6種、何かの圧着用、が装備されています。
ネジザウルス
ネジザウルスは商標。ドライバー等でネジの頭をつぶしたときの最終兵器の一つ。ペンチの先端部分に、ネジの頭を掴むのに適した形状が施され、つまみながら回してネジを緩める。便利ではあるがお世話にはなりたくない一品。ショックドライバーも、アタマををつぶしたときのお助けツールである。
万力(バイス)
バイスを叩くのはもってのほか。ハンマーで叩けば、バイス内を衝撃波が伝播し、たちまちぱっくりとひびが入り、最悪の場合は真っ二つに割れて落下する。ただ挟み込むだけの使用に徹すること。つかんだ工作物を叩くのもNG。ニュートンの力学法則にしたがって、力はバイスにも伝播していることを忘れないこと。ワーク(製品)に傷をつけないよう、延性材料のアルミ板などをかませて使用する方がよい。
シャコ万(シャコ万力、クランプ)
固定用のツール。コの字形状のアームに押さえつけるためのパッドがついたボルト上のロッドがついている。手で回すためのバーがついているものもあるが、バーなどを通す穴に身が開いているものもある。前述のように、その辺の棒状の工具を使用しないこと。
ハンマー
プラスチックハンマー(プラハン)
図 ハンマーとプラスチックハンマー
打撃痕を与えないようにするにはプラハンを用いる
切断工具
カッター、ナイフ
最近は、確かに切れ味はよくなったものの、飛躍的に進歩したわけでもないのに、たかがカッターでも社員の使用許可が必要なメーカー企業も増えているとか。日本人もそれほどに道具が使えなくなり、猿人化が進行していると言うことなのかもしれません。ルーツを同じくするオルファとNTカッターが市場を寡占していて、非常に多用で便利な商品を発売しています。使用目的に合った大きさ、形式のものを選ぶことが最善です。
1.棒状のものの先端を削るときには、前方に人がいないことを確認し、手前から先端に向かって指で押し出すように使用する。当然、刃よりも前に持ち手をおいてはいけない。
2.樹脂板、ゴムシートや紙などを切り抜く場合は、必ずカッティング台を敷いて、さらに机上に傷をつけないよう適切な切り込みで使用すること。
3.ガイドにスケールなどを用いる場合は、ガイドに食い込まないように必ず鉄製、ステンレス製のものを用いること。アルミ板やプラスチックスケールなどは切り込んで使用不能になるので使用禁止。
ニッパー
主に電線の切断や被覆除去などに使用する電工系の道具。刃はこぼれやすい(欠けやすい)ので、銅線よりも固いステンレスなどの針金などの切断には使用しないようにするか、注意して回しながら少しずつ切り込むか、できるだけ機械用の大型のもの(金切りばさみ:MITSUBISHI TESKY など)を使用すること。最終的には帯鋸盤などの工作機械を使用してください。
特に精密ニッパーの取り扱いは、金属には使用せず、細心の注意を払ってください。
図 金バサミ
喰切、エンドニッパー
歯面が開閉軸と平行になったニッパー。喰切(くいきり)は日本の伝統工具としての名称。歯が軸と等距離にあるので均等に力が加わり、一般に同サイズのニッパーよりは軽い人力で大きな力が発生する。針金等線鋼を切断するときなどに用いる。
のこぎり、糸のこ、帯のこ
手鋸(ハンドソー)
パイプカッター
パイプに装着し、パイプの周りを回転させるながらノブを回して切り込みを深める。カッターが少しずつ切り込んでパイプを切断できる。パイプの周りを安定して回転させるため、二つのローラーと回転カッターの計三点で支持されている。
図 パイプカッター。このパイプカッターは金属パイプ用。
千枚通し
電動工具
電動工具は、最近は安価なものも出回り、一家に数種類あるとたいへん便利です。とくに、電動ドライバーは1000円程度でも入手可能ですので、トルク調整付のAC100V仕様のものがひとつあると、DIYや家具組み立て等でたいへん重宝します。
一方、電動ドリルやディスクグラインダーも、非常に便利ですが、後者は回転機械故にたいへん周速度も速く、作業効率が高いとともに事故が起こった場合にはダメージが大きく相対的に危険です。回転機械では手袋は一切禁止です。特に軍手などの布は簡単に刃先に引っかかって巻き込まれてしまいます。素手なら、刃などに当たった部分の皮膚や身、ひどくても骨が削れるだけですみそうです。機械工作の本格的工作機械では、万が一の事故の際には腕の一本くらい持って行かれることはざらで、命を失うこともありますが、さすがにハンディ工具では、指が飛ぶくらいですむかもしれません。
使用時には、極力両手でハンディ機械を保持して、振動による機械の跳ねなどを押さえ込んでください。ワーク片手、機械片手は危険です。機械がふらついて、ワークを持つ手に当たれば、即、事故になります。ハンディ工具を取りつける簡易な治具もありますが、上述のことを踏まえれば、固定の緩みがないか逐次確認が必要なことがわかるでしょう。でも、正しく使用すれば安全で便利な機械です。
流体系で水回りの実験を刷る本研究室では、AC使用のハンディ機械の使用にはもう一点、感電事故に対する注意が必要です。アース線がついている理由はここです。感電事故についてはこちらの記事も参照して考えてみてください。
以上、簡単にまとめると、ハンディ電動工具の注意点は パワー と 感電、です。
卓上電動ドリル
卓上ドリルは、簡単にきれいに板やブロックに垂直に穴を開けることができます。小さな穴(~Φ5mm)であれば、ワーク長さが200mm程度あれば、注意すれば手持ちで穴を開けられます。やや大きめだと、しっかり持たなければ、特にドリル刃をあげるときに食い込んで、ワークが回転してしまうこともあります。仮にそのような場合でも、慌てずに、すぐに作業する手を離し一旦安全な距離を確保してください。長めのワークなら、たいていの場合はヘッドを保持するポールに当たって止まります。小さなものはくるくるドリル刃と一緒に回ります。その後 速やかに安全を確認してスイッチを切りましょう。逃れることさえできれば、最悪でもドリルの折損とワークの損傷程度で済みます。相手は機械ですので、決して逆らってワークを咄嗟に押さえようとしないでください。トラブルでは、まず万歳して一歩以上下がる、安全確保が基本です。
電動ハンドドリル
電動ショックドリル
電動トルクドライバー
装置の組み立て分解や、模型やマウントの脱着など、これがなければやってられないほど便利なドライバー。トルク設定することで、締め付け強さも均一になるので安心。学生さんが使用しても水槽やアクリル板に亀裂を入れる心配も減少します。
電動グラインダー
高速回転するディスク形状の砥石。据置型とハンディタイプがある。アルミ素材のような延性材料は、切削粉は変形して砥石の目を塞ぐように食い込むため、砥石の性能を低下させる。専用の除去工具もある。砥石は、脆く、重量もあるために、回転時に破損すると非常に危険である。工作物が安定して接触していなかったり、抑えが弱くバウンドしたり、研磨中に食い込んだり巻き込まれたり、あるいは、巻き込み防止カバーの隙間(砥石の磨耗のため)に食い込んだりすることで、砥石に撃力が加わり、破損することがある。使用時には、火花や研磨粉も飛んでくるので防塵メガネを着用し、破損時に砥石が飛びやすい回転面から外れた位置に立ち、頭も同様に回転面に入れないこと。横手からのぞき込むような姿勢で安全確保して使用のこと。切り粉が勢いよく飛ぶので、直接または跳ね返って飛んでくる切り粉よけに特に裸眼の人は保護めがねを着用のこと。
ディスクサンダー(電動ハンドグラインダー)
ハンディタイプのグラインダー。ディスクを目的に応じて交換することで、金属や樹脂材料に対して、研削、研磨、切断、などの加工ができる。電動グラインダー同様、ディスク回転方向を把握し、立ち位置、姿勢、切り粉と火花の飛ぶ方向、保護めがねの使用に配慮のこと。ひとつの方法は、両手でしっかり持ち、ディスクカバーをワークに押し当て、そこを支点に回転させるように切り込むことです。また、ディスクグラインダーでは作業時に火花が飛ぶのは当たり前です。火花が当たったくらいで動じて力を緩めることのないよう、腰を入れて落ち着いてゆっくり確実に切り込むこと。火花、切り粉は自分と反対側に飛ぶようにし、周りの人にも配慮のこと。仮に指を挟むと現行機では片手ではスイッチが切れないので、指の一本や二本くらいは飛ばせる機械であると言うことは忘れずに。
図 ディスクグラインダー 上部前方の赤いボタンは、ディスク交換用の軸ロック。ディスク中央の円盤状のナットを専用工具で緩めてディス乃交換を行う。
エアツール
本研究室には、今は小型コンプレッサーが一台あります。しかし、エアツール用としてはほとんど使用していません。エアツールは、一般には空気タービンを利用して、回転運動をそのまま、あるいは他の運動に変換して作業を行う工具です。切削、研磨、穴あけからエゼクタ利用の負圧機器まで、特に空圧配管を設備した工場などでは多く利用されているようです。最も身近に体感できる類似の器具は、歯科治療用のタービン機器でしょう。
安全面から行けば、本研究室の水回りの実験室環境では、電動工具ではなくエアツールを利用すべきですが、大人な事情で実現はできていません。現状、本研究室で使用するのは、異物除去等のためのエアノズル、空気入れアダプタ、か、せいぜい塗装用のエアブラシ程度です。圧縮性が影響する空圧配管については別項目意を参照方。