[06] 強度設計(2) 疲労強度 きかいのき_翼のある乗り物、二点

さて、最近は民生量産品機械の多くは樹脂で製造されることも多くなってきました。

特に一般大衆向けの機会の多くは、樹脂製です。機械的な開閉、ボタンなどの往復運動、タクト運動、までも樹脂製部品が多く使用されています。非常にシンプルな構造のものでは、樹脂板に薄い溝を掘って(成型して)、繰り返し曲げによって開閉するヒンジもあります。

当然そのような樹脂は、そもそもが金属などとは異なる粘弾性材料の特性を持ち、クリープ現象が常温近くで生じたり、引張速度の影響を受けたり、、、で、やがてちぎれてしまうことは身近なだけにご存じのことでしょう。

その点、(大衆ではなく専門的な)一般機械では、金属材料を使用することが今なお多いです。樹脂を用いるにしても、それは弾性限度で使用するなど、繊維強化ブラスチック(Fiber-Reinforced Plastics)が多いようです。

さて、今回は疲労強度計算です。イニシャルクラックを元にした亀裂進展計算はのぞきます。それらは次回以降で取り上げる予定です。

 

疲労 — Fatigue

疲れ、です。繰り返されるダメージは、人の体や精神、そして金属材料にもダメージを与えます。

金属材料を弾性範囲で使用していても、繰り返される荷重を受けると、その組成の粒子間 — それは原子や分子や結晶など — にはく離(転移現象)を生じ、やがて割れとして機械部品を破壊してしまいます。

次図は、あの MILハンドブックからの引用です。

疲労曲線例

ここでは、7075-T6材(超々ジュラルミン表面除荷熱処理済)の疲労強度特性が示されています。点は疲労実験で破壊が起こった回数。曲線はその近似曲線です。縦軸には最大応力、パラメーターは平均応力なので応力比がわかります。横軸は繰返し回数。runout はその応力では破壊しない fatigue free 応力と言うことです。

このような設計資料を用いて設計を行うには、使用状況から応力のパターンや最大応力、想定繰り返し数を設計時に推定しておく必要があります。

 

 

日本の代表産業である自動車会社がそこまでやっているかはわかりませんが、航空機メーカーでは運用機の状況をモニターして、かなり確度の高いデーターを蓄積しています。

自動車では、車検や6ヶ月点検等をしていますが、結局は、壊れたら修理する、が本のように思います。そうでなければ、親切な技術スタッフが、これはもうそろそろ寿命ですよ、と故障防止のために声を掛けてくれ、その自動車販売店の技術の一言で交換をします。その言葉に重みを感じないのは、単純な平均寿命で判断やアドバイスをしていることです。そもそも、現在のディーラー技術にメーカーがどれだけ効果的で適切な教育をしているのか疑問です。想像するに、高級車ブランド車はどうか知りませんが、搭載管理コンピューターには部品交換時にタイマーリセットして、規定時間または規程走行時間のどちらか早い時期に到達したら、部品交換営業をする、という営業シナリオになっていそうです。そこにはまだまだ先端設計の思想は感じられなさそうです。さて、実態はどうなんでしょうか。

日本では1980年代に初めて導入した ASIP( Aircraft Structural Integrity Program)、今はそこにさらに細かなセンサーも加えてHUMS(Health and Usage Monitoring System) のようなモニターシステムを導入して、高価な商品の値打ちをさらに保障するようになっていますが、その話は回をあらためてする予定です。

 

後日追記予定。