[03] アルミ金属材料 きかいのき_翼のある乗り物、二点
翼のある乗り物、二点 03 アルミ系金属材料
本研究室では、足腰が弱い教員が指導するため、基本的に重量物の装置は不可です。
翼のある系の業界では、一体成型複合材やチタン、マグネシウム合金も導入されていますが超高級品でコストや手間が本研究室向きではありません。
したがって、コスト的に問題がない限りは、アルミ系金属を多用します。もっとも、鉄系金属の軟鋼あたりで作ると、赤錆が増えた時点でゴミといって無断破棄する輩、あ、方々があまりに多いという人材的背景もあります。したがって、構造材で鉄系のSSシリーズを使用する場合は、軽量穴と塗装は必須です。アルミ系でも歩留まりが落ちてもザクッと身は抜きますが。。。。
さて、前回、材料の選定には情報が大切というお話をしました。アルミ系金属には代表的分類があります。これらの特徴さえ覚えておけば、材料選びに一定の判断ができるようになります。
なお、純アルミニウムは、非常に強い酸化性を持ちますので、空気中、水中ではすぐに酸化します。この酸化膜は強固で、透明で、耐腐食性がアップしますので、単体では、アルミ合金に強度が劣る純アルミですが、諸々の条件で耐腐食性はアルミ系金属材料中最強と言えます。
アルミ系金属が壊れる時に怖いのは、大抵は長時間使用の攻めた強度設計の場合ですが、塑性変形を飛び越して一気にクッキーが割れるような粒界割れを起こすことです。きっかけが、腐食や加工キズ、使用キズ等によるイニシャルクラックで、荷重原因が内部残留応力や負荷の場合は応力腐食割れ、などいろいろ名称があります。耐腐食性は、こういう事故が起きにくくなる要素になります。アルミ合金は、そのままでは粒界割れが起きやすいので、冷間、熱間圧延などの加工で粒子を操作しますが、この時に残留応力が生じたりもします。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jilm1951/31/3/31_3_195/_pdf
あと、アルミ系金属はイオン化傾向の関係で、鉄系、銅、真鍮などのボルトナットをなんの対策もなく使用すると、電食によって溶出腐食しアルミ部品が破壊します。可視化実験装置では要注意です。個人的にはそんな製品を使って遭難しかけたことがありますので、メーカーよりも自分自身を信じられるように切磋琢磨してください。
アルミ系金属は、頭にAをつけて、4桁の数字で表されます。
系列 | 成分や呼称、特徴 | 強度 | 耐腐食ほか |
A1000系 |
純アルミ。腐食性が強いが透明な酸化アルミ膜が強力に腐食を防ぐ。スポット状腐食ができてもその内部でまた腐食を防ぐ。
A1050,A1080,etc. 後ろ二桁が純度を示す(純度99.xx%)。 通電性もよいので軽量電線心材にも。 |
強度弱い。 | 酸化膜(白色)により対腐食性強い。他合金のクラッド材にも使用される。
コントロールされた酸化膜はアルマイト加工で着色も可。 鏡面加工には純度の高いものが適する。 |
A2000系 |
銅合金系。熱処理。ジュラルミンA2017。超ジュラルミンA2024。加工性なら A2011。 |
強度最高級。 |
耐腐食性最低級。銅由来。
アルマイト処理は可能。 |
A3000系 |
マンガン系。加工性が良い。 |
強度良好。 |
やや耐腐食性あり。マンガン固溶体硬化効果。 |
A4000系 |
ケイ素系。シリコン効果で融点低下するので鋳物に適す。 | 耐熱性、耐摩耗性。 | あまりよくない。 |
A5000系 |
マグネシウム系。使いやすいオールラウンド性で、加工性、溶接性もよいので広く使用される。 A5052が使いやすい。溶接にはA5083。 |
強度良好。 |
耐腐食性良好。 アルマイト処理は可能で5056が最適。 |
A6000系 |
マグネシウム–ケイ素系。窓枠等建材に使われる。ホームセンターの建材のアルミ系が丈夫なのはこれ。 |
強度良好。 |
耐腐食性良好。耐応力腐食割れ良好。 |
A7000系 |
亜鉛–マグネシウム系。A7075は零戦住金で有名な超々ジュラルミン。航空機、スポーツ用品、ほか、軽量重視の高級品用。 |
強度最強級。 |
粒界割れ。ただし、A7072は耐腐食性良好。 |