機械工学
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風力発電と温暖化
世間では、産業革命以降、とりわけ1980年頃には、二酸化炭素排出量が増大し、地球温暖化が急速に進行、北極の氷が溶けて、南国の諸島国家が水没する、というのが今の常識です。このことは、学会に投稿する論文においても、前提として論説され、これを否定する文章は、とりわけ日本の学会では極めて勇気のいることです。
本研究室でも、地球温暖化、二酸化炭素排出、という言葉はありますが、基本的に重要な位置付けは、「自然エネルギー利用技術」のひとつです。
地球温暖化は、学術的には当然ですが、まだ、二酸化炭素排出が原因とは結論付けられていない、研究途上の仮説です。「学術的に」ということばは、今回のコロナ禍でもこれに関わる問題があったかと思いますが、最終的な結論には、厳密に、仮説が科学的データーによって関係を証明され切ることが必要です。したがって、今回のコロナ禍のような社会的事象が発生、進行中には、学術的検証結果を重視しすぎることは、科学としては大変問題があると思います。つまり、目前で発生していることに対して、科学的推論に基づく仮説を、可能性を試して利用することは、社会現象については大切と思われるからです。とりわけ国家は、国民とその生活である社会に対して、あらゆる責任を負っているので、目前の問題を臨機応変に対応する行動力もまた、求められます。今回の、オリンピック開催実行委員長の発言により、日本人的発想や文化の違いが改めて明確になりましたが、全てを完璧にすると言いつつも、それが結果的には目前の問題を甚大化してしまうという事実に、目を瞑り、事後には、追うべき(屁)理屈上の責任が生じないことを重視して、発生した本来責任を負うべきことを有耶無耶にする、という国家、それを容認している社会の一端が見られました。
西欧でも、本来責任を負うべきことの責任を回避していますが、それは、後述するように、日本のように曖昧にはしていません。責任があることを認めた上で、免責にしています。責任あるものを責任がなかったと逃げる制度ではありません。その責任を認めることが、真の事実をあからさまにし、失敗を後世に生かすことにつながり、結果的に、国民とその社会に大きな利益をもたらすことを理解しているからです。
責任の所在と免責が組み合わさった制度は、西欧には複数あります。工学的、工業的なものでは、事故調査委員会とその関係者との関係でしょう。とりわけ、航空機事故の調査においては、事故の原因究明のために、多くの関係者が聴取されますが、厳しめのフランスでは報告書には全て匿名報告で、しかし原因考察以外の実証拠は警察等行政機関と共有されるそうです。アメリカでは、民事には情報提供が制限され、法に明記された意図はないものの、法で証言萎縮効果への配慮が見られるそうです。日本では、運用で中間的なポジションにあるようですが、この運用上での扱いは、規定がないので非常に曖昧な運用と言えそうです。
ドラマでも、米国では司法取引によって免責が与えられたりするシーンが垣間見られます。もちろん頻繁に、現場の成果アップに使われるのではなく、別組織がそれなりにきちんとした基準を設けて運用し、日本のように国会で立法機関が「現場に使いやすい法律」を評価するような状況にはないようです。日本で司法取引が導入されたら、とても大変なことになるか、それを恐れてほとんど使用されないか、のどちらかであろう、というのが、日本の科学的合理性、の実態であることが窺えそうです。
コロナの非常事態宣言で、誇らしげに発表される各都道府県の解除基準も見てみましょう。数値基準を公表することで透明性を確保する、と説明があっても、確かに数値でわかりやすいですが、数値の決定にか餓鬼的合理性がないものが多くあります。したがって、意思決定時には決まり文句の「総合的に判断して」という文言が出たり、専門家の指摘で安易に数値目標を利用した解除基準は反故にされたりしました。
このトピックが掲載されている頃には結果がわかっているでしょう東京オリンピックの長の選考も、手続きだけが重んじられて、基準が公開されず、候補者もおそらく公表されず、その比較結果についても、当然科学的合理性による基準がないので公開できないのだと思います。それは、IOC理事等が指摘している、日本の判断のおかしさ、の核心だと思います。
というわけで、日本では科学的合理性よりも、浪花節的親和性が重視される社会ということです。これが、日本では革新的理論や製品が生まれにくく、世に出にくい大きな原因と思います。
で、風力タービン。
間違いなく自然エネルギー利用のためのデバイスです。地球温暖化防止装置かどうかはわかりません。でも、火力発電よりは、二酸化炭素排出量は少ないと思います。したがって、CO2排出量削減効果はありそうです。CO2排出量削減が地球温暖化に効果があるならば、地球温暖化の真偽はわかりませんが、地球温暖化対策に効果があるのでしょう。
機械系としては、タービンは古来からの流体機械の代表です。かなり古いタービンが現存していたりすることもありますが、たいていは、そのケーシング、流路の方が古く残っています。しかし、このことはとても大切です。
現代においては、「エネルギーは電気である」という認識が社会では多勢を占めています。機械系としては、最終形状が電気であっても、そこにはさまざまなエネルギー変換が存在しますので、流体から、機械的エネルギー変換で運動エネルギーにさえしてしまえば、あとは既存技術等だけでもどうにかなります。したがって、風力に限らず、流体力を運動に変換するタービンは、これからも主要な機械の一角を占めることと思います。
# 書いてる尻から気になりますが、流体力も元々は流体の運動エネルギーからの変換ですから、この文章もいい加減な文章です。
# 優秀な読者の方がたに。翼の力の源は、翼上面の負圧によるところが大きいです。でも、その部分では、流体速度が増して運動エネルギーの方が大きくなってます。負圧という圧力のエネルギーが少ないエリアの方が大きな力を発生している。何か文章が物理法則に矛盾しているとは思いませんか?🙂
したがって、このトピックスのタイトルは厳密には、風力タービンと温暖化、は直接関係あるかどうかはわからない、です。
さて、自然エネルギーのうち、もう一つ大きなシェアを締めているのは、太陽光発電デバイスです。
2020年、日本の自然エネルギー利用は、2015年に宣言し、一部世界の批判を浴びていた「2030年に22~24%」と言う目標を、すでにクリアする23%あたりまで来ています。これは、頑張ったと言うよりは、見積もりが甘かったと言うのが妥当でしょうが、もちろん政治の世界の駆け引きの話なので、深く追及することでは無いと思います。
その内訳で、太陽光発電はシェア2番手となり、風力発電の9倍程度。トップ水力発電に肉薄しています。
機械工学的には、水力発電も風力発電も流体機械です。同じくタービンでも、シェアでは風力発電は3番手のバイオ廃棄物発電にさえ2.5倍の違いがあります。一応全発電量の0.9%で4番手につけています(2020年10月期)。https://www.iea.org/reports/monthly-electricity-statistics
一方世界に目を向けると、風力発電シェアはOECD 加盟国トータルで10.1%。自然エネルギー利用政策に反対してきたトランプ政権下のアメリカですら9%。同じく原子力発電を運用するフランスは10.2%、ドイツでは27.0%。同じ島国のイギリスでは26.9%。先進国は軒並み二桁でトップクラスは3分の1を超える勢いです。太陽光はといえば、全体で 3.6%。先進各国は2%前後が多勢で、日本の8.9%は特筆すべき割合のようです。
ただ、極東の国々では、台風という問題もあるのは事実です。近隣諸国を見てみると、韓国は0.5%で同レベルです。台湾が気になりますが、OECD IEA 資料では政治的問題のためか非加盟です。ただ、日本同様、太陽光利用重視の方針のようです。https://energypedia.info/wiki/Energy_Transition_in_Taiwan
では、太陽光発電パネルが台風に強いかどうかは、やはり設置方法によるものと思います。一般に、太陽光パネルは北側斜面に、南向きに緯度角に応じた設置がされていることと思います。単純に考えれば、北風が吹いた場合、起き上がった側に隙間があれば、風圧をまともに受けるため、強風時にはそれなるの強度が必要です。南風が吹いた場合、吹き込みは少ないかもしれませんが、上面を過ぎる流れが後縁で剥離するとき、大きな渦を形成し得、非定常の場合には、循環の変化に応じた非定常力が発生します。複数列に並べられたソーラーファームでは、おそらくこれらの現象が複雑にミックスされた流れによって、確率的にピーキーな流体力も発生することでしょう。したがって、台風などの下では、そもそも流体に対峙して設計された風力タービンに対して、必ずしも太陽光パネルが優位とはいえず、優位性は結局、その設計によるところが大きいと思います。
また、太陽光パネルはその素子に、熱的な疲労が生じるようで、寿命があるようです。制御機器等の付属機器も、定期的な交換が必要です。すなわち、電気工学、物質工学に負う割合が大きい太陽光パネルでは、一定期間内には全交換が必要です。機械であるタービンは、もちろん台風等による機械的損傷を受け、また、電気を扱うことから電気機器の寿命も併せ持ちます。しかし、一般に、機械部品は適切なメンテナンスによって寿命を伸ばすことも可能で、パーツによっては半永久的に使用できる設計強度があり、その割合は、機械固有の利点になるかもしれません。極端にいえば、機械的ダメージがない限りはいつまでも使えます。これは、電気物理学に基づく発電デバイスとは異なる特性かもしれません。
さらに、日本では最近大きな台風や地震は発生していますが、大噴火は発生していません。世界的にも、平均気温に影響するような大噴火も発生していません。もし仮に、大噴火がどこかで発生すると、地球上の広範な範囲で平均照度が低下します。粉塵の降灰は限定的なようですが、下部成層圏まで二酸化硫黄由来のゾルが上昇し長く滞留、概ね一年で1/3減少するそうです。このエアロゾルには日傘効果後温暖化効果があるそうですが、通常、冷夏を発生させて、作物不作を生じるようです。日本では、阿蘇カルデラ噴火、富士山噴火、がその最大警戒対象ですが、世界的に見れば、かなりの候補があるようです。
このような火山噴火は、降灰と日照の低下を招きます。降灰は、タービン回転機械系にも影響を生じる可能性はありますが工夫は可能です。日照減少には風況変化がない限りは風力タービンは大きな影響を受けないかもしれません。
【尚推敲中】
結論として、風力タービンは、地球が温暖化しようが、寒冷化しようが、おそらくある程度の効率でエネルギーを生成することのできるデバイスで、しかも、比較的安価な金属などの機械材料中心に、メインテナンスを通じて末長く利用できるデバイスであるということです。だいじに長持ちする機械は、いつの時代も、トータルコストやエネルギー消費、すなわちトータル二酸化炭素排出量、資源リサイクルの観点で、それなりに有利なはずです。
もちろん、エネルギー密度が800倍高い、これまでの歴史を誇る水力タービンは、環境変化にも強い最強の自然エネルギー発電デバイスかもしれません。