雑感
category
新型肺炎感染拡散危機における中期日程大阪府立大学工学域入試実施の合理性考察と実施実態の観察
2020年度入試も、3月25,、26日の二次(後期)日程を終え、おおかたが修了しました。
政府も、この日程に忖度したのか、27日、東京大学などの入試修了を受けて、急に3月2日からの全国学校等の休校、および民間への本対策に呼応した出勤自粛などを大々的に要求しはじめました。これに応じて、27日からは民間イベントも含めて多くの事業が中止、順延されているようです。
その中で、6000人規模の大規模入試となる、大阪府立大学工学域の入試が、いよいよ8日日曜日に実施されます。
本入試は、(公)大阪の大学本部が、感染者救済として、2次試験を非受験でも、センター試験によって合否を判定すると発表しました。また、その科学的な根拠として、センター試験と2次試験の成績が、非常によい相関があるため、センター試験のみで判定を実施しても差し支えない、というものでした。
ここで、論理的に少し気になるものがあることに気づかれた方も多いかもしれません。
センター試験は一体何のために実施しているのであろう。
2次試験は何の目的で実施しているのであろう。
大学入試センターの説明では、
「大学入試センター試験は、昭和54年度から平成元年度まで実施された国公立大学を対象とした共通第1次学力試験に代えて、平成2年度から国公私立大学を対象として実施されています。
平成23年度からは、AO入試を実施する際は、大学入試センター試験の成績を出願要件(出願の目安)や合否判定に用いること等に留意することが大学入学者選抜実施要項(文部科学省高等教育局長通知)に明記されました。」
そして役割として、
1.難問奇問を排除した、良質な問題の確保
2.各大学が実施する試験との適切な組合せによる大学入試の個性化・多様化
3.国公私立大学及び公私立短期大学を通じた入試改革
4.アラカルト方式による各大学に適した利用 大学入試センター
の4つがあげられています。大学の利用方法に直接関連するのは、おそらく2番目の項目の、個性化、でしょう。かつてより、本法人も、大学の個性を発揮する、などの放心を長らく、何度も掲げ、幾多の改革を実施し続けています。つまり、共通テストの結果で判定を行っていれば、個性は生まれることなく、ただ、学業生成機がよい遠い得スケールでのみの合否判定になります。したがって、その結果を参考に、あるいは閾値と使用して、2次試験では個性につながる試験を実施することが、現在の入試制度では合理的です。
そのため、この趣旨に沿えば、2次試験の存在意義は各大学にとって非常に大きいものになります。
# だからこそ、今回のセンター試験改革が破綻した理由も見えてくるような気がしますが、、、
# 多分そんな検証や分析は行わず、組織存続第一主義で収益維持のための拡大路線で行くのでしょう。
# 複雑なものに手を出せば、経営効率が悪化して受験料値上げか破綻するのはその先のゴールです。
今回の(公)大阪本部の判断、説明では、この条件に照らし合わせて矛盾を感じます。
しかも、科学的妥当性の理由としてあげた、「センター試験と2次試験に相関がある」という事実は、2次試験はセンター試験の単なる追認試験である、といっていることになります。この意味は、大阪府立大学工学域で実施されている試験の問題は、熟考して作成されたセンター試験の入試問題と同様、非常に一般的で、その意味で良質である、ということです。このことは、センター試験の意義の一つ目の項目に合致します。
しかし、2次試験実施の目的は自大学自学域の出題問題の妥当性の科学的検証でしょうか?
もしそうであれば、毎年非常によい問題を出題していることは素晴らしいことです。
そのために、5000人前後の受験生を動員し、統計学的にも他の入試に比べて非常に科学的データーが充実した検証実験です。
でもこれは少し違和感を感じます。入試の目的はそもそもなんなんでしょうか。そこまでの経費、時間と労力をさいて、出題の妥当性を確かめるためのものではないはずです。上述のように、大学の個性に合致する人材を選考するためのもののはずです。
個人的には。相関が強いと言うことは、それら試験の質は同じ、ということに思えます。同じ質の試験ならば、そもそも実施しなくってもよいものだった、ということにつながるように思えます。実際、本課程で接する最近の学生さんの気質については、いくつかの別トピックスでも記したとおりです。でも、これは優秀な教授陣やさらにそこから選出された経営陣が熟考し決定しているはずで、問題などあろうはずがないものです。
今回、全国で多くのイベントとが中止になり、合格発表ですらキャンパスでの実施を中止している状況で、スタッフ共々6000人規模の密室イベントが開催されます。これは、科学的に見れば、感染症専門家にとってはまれな社会実験かもしれません。
試験会場での防疫の具体的手順や、受験生の感染有無の状況、試験場往復の使用交通機関やそのときの状況、などなどの社会的要素が含まれた、5000-6000人の被験者が参加する大規模実験です。今後の日本の新型肺炎の拡散を、ある意味予測するのに、非常に貴重な対処方法や貴重なデーターを得るイベントになるかもしれません。
今回は、入試なので、参加者がすべて追跡可能です。座席位置まで追跡可能です。受験者に何かあれば、おそらくすぐに連絡があるでしょう。入試従事者は既に何かあった際には報告することが指示されています。
大学本部にも医療の専門家も多くいる(公)大阪が実施する、防疫体制も十分に採られた環境下で実施される大規模入試。
試験終了後2週間を目処に、いかに感染者を出さずに実施しきれるのか。この入試の観察とその成果は、きっと世界に多くの貴重なデーターを提供することができるでしょう。医学系所属の専門家も含む経営陣を冠する大学の大規模中期試験。結果的ながら、たいへんよい時期に医学部を擁する大阪市立大学と法人合併したものです。おそらく同時期に同規模以上のイベントはないであろう状況で、入試を敢行する経営陣の英断と感染防止の自信は並大抵のものではないはずです。入試ゆえんと疑われる感染者が1名も出ずに無事終えることを願います。
受験生のみなさんも、感染対策を万全にし、しっかり研修を受けた試験官の指示に従い、安心の中にも適切な緊張を持って工学域受験に臨んでください。入試でのご健闘を祈念しています。
新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の具体化に向けた見解 2020年2月24日 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議