機械工学
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これからの製造業は、、、~ 工学域の課程えらびで悩んでいる人へ
さて、今年は年末に代表的スペースオペラ作品の一つのスターウォーズシリーズの新しい作品(スカイウォーカーの夜明け)が公開されるそうです。
航空宇宙システム工学の守備範囲である宇宙を舞台に様々な乗り物が飛び交うこの作品は、機械系技術者にとっはもきっとインスピレーションの種が詰まっていると思います。
さて、そんな乗り物に興味を持つことを動機として機械系に進学する人もほぼ絶滅した昨今。近年の機械系ですが、製造業を支えるといいつつも、最近の工業製品の中では急速にその活躍の範囲を縮小しています。つまり、これまでの機械の分野で製作していた機械を、どんどん電気、電子機械が置き換えています。しかも、電気、電子のコントロールは、情報工学が制御します。また、電気、電子のセンサーは、化学や物質工学により改革され、化学工学により大量生産で製造されます。機械工学の主要材料であった金属材料は、その使用割合が低下してきています。もはや機械工作機械や製造機械やほぼ自動化されつつある強度設計、そして本業である機械設計でしか、機械工学の活躍の場はなくなってきそうです。
#そんなことを言うと、先端工学でまだまだ機械工学は活躍している、という声が聞こえてきますが、それは機械工学に所属する大学教員が主に言っているだけで、その内容が理学に近づいているという意味では、もはや理学の守備範囲に苦し紛れに侵入しているようにも見えます。それが理学に近い分野であるのならば、もはや理学の人材を優先するのが自由市場というものです。どうでしょう。
機械工学を目指す人は、一度身の周りの機械を見回して、機械部品がどの程度含まれているのかをチェックしてみるのもよいでしょう。そして自分の思う機械工学のイメージや少し古い情報を元に推奨する人たちの意見、オープンキャンパス等で内部の人々が広報する内容、などなどを比較検討して、ギャップがないかを自己でしっかりチェックしてみてください。
最近のニュースでも、そんな機械工学の状況を映し出す典型的な技術のひとつが、航空工学の部門で実現化しつつあります。
これまでは機械的な作用で行っていた戦闘機の攻撃の主役である装備、誘導飛翔体が、まもなくなくなってしまうかもしれません。
飛翔体は、電気電子情報工学に基づく制御装置の指令によって残り少なかった機械部品である、制御翼によって飛行し、目標に衝突あるいは近接したとき、センサーによって化学物質による爆発を利用する機械でした。何よりも、高速飛行する部分では、流体工学が必要とされていました。
アメリカで実用化のめどが立ったのは、俗に言うエネルギー照射による装備です。
# きっとこれも「サスティナブルエネルギー」の一種と言われるのでしょうか。
その名も、アメリカの代表映像レーベルに登場する組織になぞらえたのか SHiELD(Self-protect High-Energy LASER Demonstrator:自己保護型高エネルギーレーザーデモンストレーター)。
ほとんど見たことがないかもしれませんが、SFのドラマやアニメに出てくる、エネルギー砲がとうとう航空機上で実用化されると言うことです。
# 多分ファンタジーもののゲームなんかで出てくる、槍やハンマーのような物理的攻撃ではなく、魔法のようなもの、といった方が伝わりやすいのでしょう。
エネルギー照射は、高エネルギーレーザービームを用いるため、問題は大電力供給装置の小型化です。もはや推進剤としての化学薬品も必要がなくなり、機械工学の守備範囲はおそらくせいぜい、高精度のミラー操作程度になってしまうかもしれません。
もっとも、現状では相手への直接の攻撃ではなく、自機に向かってくる飛翔体を的確に破壊することが主要目的です。空気中ではレーザーの減衰が激しく、スタンドオフでの運用には不適当なためと思われます。まだ機械工学の領域はかろうじで残りそうです。
機械を制御するのに必要なセンサー部品も、かつては機械式センサーが用いられていました。現在では、機械系教員でも機械式センサーの名称を列挙することは困難なほど、過去の遺物化しています。そんなセンサーは、まずは電気式に置き換えられ、機械部品を排除することで、信頼性と生産性を向上させ、低価格化を実現しました。最近では、画像技術を用いて、画像解析によるセンシング技術がどんどん発達しています。もはや機械工学の入り込む余地がなくなったジャンルの一つです。
そのほかでも、自動車は、基本的で頼吾ことや安全性にも影響のある重要なシャーシの設計は機械工学の領分からはなくならないと思いますが、それ以外の操舵や動力、パワートレインなど、機械工学が担ってきた分野はほぼ電気工学の分野に置き換えられています。さらに自動運転技術などの制御系で情報工学が大きな割合を占めるようになり、機械系の担う割合は相対的に大きく減少しているようです。
家電製品でも、製品筐体などの部品は機械工学ですが、もはやスイッチすら機械機構ではなく電子センサーになり、動く部品がないということが、音楽プレイヤーやテレビなど、もはや機械製品ではなくなってしまった電気製品も多くなってしまいました。家電で残された機械は、冷蔵庫やエアコンのコンプレッサーや、洗濯機の回転機構くらいかもしれません。
自動機械やロボットも、もちろん機械力学に基づく制御等は今も重要ですが、その割合は非常に低下し、人工頭脳とも呼ばれる情報検索や、センサー、通信機能、ソフトウェアにセキュリティ技術などの新しい技術に圧倒的に漁れて埋もれているようです。政府がAI技術者育成に急遽乗り出していることもひとつの時代の表れです。
# もちろん、AIを使える技術者は技術の急速な浸透と共に需要が急増しましたが、政府が育成する職種が幸せになっているかどうかについては、過去の事例を調べてみるのもよいでしょう。
現在、機械製品で世界的に評判が高く、その評判で実際に購入され販売が好調なのは、厳選すると生産機械だけかもしれません。
2018年の盛夏。オープンキャンパスが開催される季節でもある今。2020年度入試を目指す受験生にとって、この時期はまだ少し時間に余裕のある最後の季節。工学域の専門課程選びには、単なる課程の名称だけではなく、その中にある研究室の研究テーマにも注目し、工学域に限定することなく、企業の公表している学域別求人実績なども参考に、保護者やご親戚とも少し意見交換してみる必要があるかもしれませんね。