機械工学
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日本の製造業を背負う未来の技術者のモチベーション維持
2019年の夏も、8月目前になって急遽、酷暑になってきました。先日の在阪テレビ局の飛行イベントも、摂大U先生のチームは、台風直撃の中、結果的には最終トライアルで敢行、追い風の中、突然の向かい風でのテイクオフとなりました。記録を残しただけでも幸運かもしれません。
さて、担当(させていただいてる)大学院講義は、機械工学、航空宇宙工学の学生さんの内、とりわけ流体力学、流体工学に関心のある大学院生がおもに受講しています。もっとも、多くの学生さんは前半の教授の秀逸な圧縮性気泡力学を学ぶことが目的なようです。
前半を引き継いだ蛇足的な本研究室の担当部分は、流体力学を高度に学ぼうという学生さんにはあまり評判がよくないのかもしれません。でもまぁ、万人受けする授業はたいへん難しいので、ほんの一部でも、肯定的に受け止めてくれる受講生がいれば、まあよし、と受け止めています。
そんな今期の授業は、機械が60%強、航空宇宙が30%強で、登録総数は20名でした。
流体力学に、流体工学に興味がある機械系の技術者を目指すと思われる大学院生ですが、既に5年を経ても尚、学生さんたちは両学科とも機械にはあまり関心がないようです。機械系はもちろんですが、もっとも顕著でわかりやすいのは対象が限定されている航空宇宙工学の学生さんかもしれません。
授業中、翼の話題を扱っているときに、航空宇宙工学と流体力学に関心があるであろうと信じる学生さんたちは、まず航空機の翼には関心はありません。参加者の概ね100%です。
# 最近は、日本語の意味は時代と共に変わっていくのは当たり前というニッポンの常識により、「関心がある」の意味も大きく内容が変化しています。ここでの「関心がある」の意味は、現代ではあまり使われなくなった「ある物事に興味があってその結果それに対する知識を蓄積中である」、です。最近の「関心がある」のように、「ちょっと気になる、または、知識がつくといいなと願望があるが特に何もしないこと」、ではありません。古い定義で申し訳ございません。
最近の将来の製造業を背負うことを期待されている(あるいは私個人が期待しているだけ?)大学院生が、航空機にはほとんど興味がないようです。まず、飛行機、というものをほぼ全く知りません。もちろん飛行機の絵は描けないわけではないでしょうが、概ね、普通の幼稚園か小学生程度です。翼周りの補助翼等の機械的創美はもちろん、翼の平面形や実際の飛行機の機種、名称についての知識もなさそうです。
# あ、多分、今の時代は飛行機が描ける初等教育機関の児童は、もうほぼいないというのがニッポンの実情になっているのかもしれません。確認していません。
それならば、宇宙機に関心があるのでしょうか。最近では、身近に大陸間横断ミサイルなどの情報が流れる昨今、きっとマスコミで流れている以上の知識があっても良さそうに思います。でも、全員が、ロケットには羽根がついている、と答えてくれます。おそらく、ニュースなどのきっかけなどがあるにもかかわらず、たとえ圧縮性に興味があったとしても、飛翔体というものを自ら調査したことがないようです。ロケットに羽根がついているイメージは、どうも大昔のSF映画やアニメの印象のようです。
# たぶん、最近のアニメでもそんなロケットが飛ぶことはほとんどないと思いますが、幼児向けのアニメの影響かもしれません。三つ子の魂、、、です。幼少教育の大切さがあらためて感じられる一例です。もちろんすべてのロケットに安定版がない、訳ではないものの、です。
したがって、機械工学課程の大学院生を含めて、数学力学重視という文科相の教育方針がみごとに体現され、機械工学の大学院生ですら、最終製品の機械に関する知識が必要なくなってしまっています。
でも、そんな大学院生、大学院生のモチベーションはどのように維持されているのでしょうか。
私のような俗人は、たとえばスケール模型を作るにしても、完成品のイメージを反芻してにやにやして作業を進めます。実験装置の製作にしても、それが動く様を思い浮かべながら、今頃のCADで部品をコツコツとつり改修していきます。得られる特性に思いをはせて実験をします。自らゴールを思い描きながらでなければモチベーションが維持できないダメ人間のようです。
それに引き替え、、、、
全くゴールに関心もなくそれを自ら思い描くこともなく、何にどのように適用するかもわからないままに、ひたすら高度な数学と力学を身につける努力をし続けている彼らの何とストイックなことか!
若い人のパワーにはとうていかないません。そんな学生さんたちが支えるニッポンの製造業に、未来がないはずがありません。
そう思いながら、ぶつぶつ言いながら、赤ペンで試験の解答用紙に小言を書き記し始めるとある日の午後です。