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ドラレコは足元を!のススメ

まもなく令和元年の6月。いつまでもダウンがいるほど寒い、といっていた5月初旬から、一気に初夏、夏日がやってきました。すでに北海道でも猛暑日まで記録しています。本研究室の周辺のドラネコたちは、猫まんじゅうから一気にのびのび猫になってぐたーっと此処彼処に寝そべっています。足下の肉球を舐めなめしてクーリングです。まさにドラネコサーモメーター、です。

さて、最近の日本は、というか昔からそういう人たちは少なからずいましたが、自分のしたことに、責任なく行動し、責任を取らず、責任を果たさず、という人が(一部で?)目立ちます。目立つ理由は、あからさまになってきたからでしょう。長年の経験や常識化で、責任の逃れ方が定式化され、そういう人たちの強力な手段となり、そのツールをフルに活用して、一発逆転勝ち組転向、のためのギャンブルの低バリア化が広まってきたから、と感じます。

 # 最近の詐欺などはそれらの顕著で分かりやすい代表例です。

つまり、責任を取らなくてよい方法がわかっているので、他人をだます(それをだましたとならない方法を用いる)ことで何度もチャレンジがしやすくなったようになったように思います。

ま、そういう話と直結する話題というわけではありませんが、学生のみなさんが受講している工学倫理という講義にはそういうものに対する思想の中にあるのではないでしょうか。

 

今までの経験から、全面的には電機製造業の会社をあまり信じていません。それは、堂々と、効果が証明されていないものを持ち出して、しかもシチュエーションの異なるものをすり替えて、あたかも効果があるかのごとく印象づけることで商品の売り上げ増加を目指したり、付加価値と称して価格を他製品と差別化(虚構を高額で販売)してたりするからです。

今までの経験から、全面的には自動車製造業の会社をあまり信じていません。それは、堂々と、実は視認性が悪いにもかかわらず、しかも本音は製造コストを下げるためにもかかわらず、安全性が向上します、といって宣伝をしたりするからです。

そういうことを踏まえなくても、特に電気製品を含む工業製品は、一旦故障すると、メーカーも原因がわからないことが多いことは、結構経験している方も多いのではないでしょうか。本研究室でも、計測器の仕様についての質問、とりわけドライバー関連の詳細な質問の回答が結局「わからない」と帰ってくることはよくあります。ほぼ、クレーマーで処理されて終わりです。そもそもそういう質問が変態なのでしょうか。

実際、COTSもふくめて、制御回路に止どまらず、機械製品を構成する主要機械部品までも、製品メーカーは下請けに製造開発設計を丸投げし、故障した場合には情報も手に入れられない状態があることは知る人ぞ知るところのようです。

電気製品の故障は、保証期間内は、最近は顧客とのトラブル防止や保険の普及もあるためか、初期故障とみられる場合は無条件に素早く交換してくれることも多くなったようです。特にメーカー社内で取り上げない限りは個々の故障原因は探求されません。教育レベルの高い日本では、よき国民は、それで納得して解決します。

しかし、経年変化での故障は、有償修理で依頼したとしても、完治しないこともあるようで、結局はそういうトラブル防止のため、修理費用は商品価格の2/3になるように敷居高く設定されてたりと、これもまた道義的信頼には足りない対応だったりします。でも、経済レベルの高い日本では、よき国民は、それで納得して新しいものに買い替えをして解決します。

場合によっては、メーカーや販売店が、安心保証、といって、ユーザーにそのリスク対策費用を担わせます。もちろんこれによって、メーカーは初期故障以外のリスクを切り分け、さらなる価格競争力を得ることができます。場合によっては、保険直営によって収入も得られ、さらに価格今日省力を高められます。安心感の価値の高い日本では、よき国民は、これはとてもよいサービスと考えて受け入れて解決します。

部品が、特にたくさん集積される自動車は、それが故に多くの会社が関連するために、産業の規模が大きく、量産された場合の航空機産業の次点くらいに産業の基幹と位置づけされています。

さて、信頼性設計では、最も単純に考えれば、各部品の信頼度の部品点数積で計算されます。信頼度は1より小さいので、部品が多いほど信頼度はどんどん下がっていきます。それでもそれほど故障しない日本の車の機械部品は、世界においても、購入するかは別として、それなりには理解されてはいいるようです。

電気製品も、例えば電気や電子の基盤上には、数多くの部品が使用されています。それらの信頼度を維持するのは、それなりに大変です。しかし、抵抗やコンデンサー、ICなどの電子部品そのものの信頼性は、特に日本製コンデンサーのように、上述のように信頼性への影響に部品数が大きく関わる状況もあり結構高信頼性です。電子部品そのものは。

信頼性の低下や故障率の上昇は、初期故障時期を過ぎればある値でしばらく安定し、その後は劣化によって数値が悪化していきます。いわゆる「鍋底型」です。

最近の若い世代は、高度の自動化車両を購入していない、3年-5年程度の短期間で車両を買い換える、というのは、信頼性工学的にも、中古市場の状況的にも、非常に安全性の高い賢いチョイスかもしれません。

ついでのたとえながら、搭載されている電子基盤は熱によって繰り返し荷重が働きます。基盤は、ベースになる絶縁体の樹脂基盤上に、回路を構成する普通は薄い銅の導電体やセラミックで包まれた電子部品が半田で接着されています。自動車の場合、多くの基盤は、パーツ単位のアセンブリになっていることと、それが故に各アセンブリごとに各供給メーカーが故障原因調査のためのスマート化も相まって電子制御パーツが増えてしまったことから、それらがアセンブリ部品一体でエンジンルームに入っていることが多いようです。この場合、樹脂基盤と導体その他の線膨張係数は概ね二桁ほど違うので、30度程度の温度差もあれば、一回乗るごとに一度の結構な引っ張り応力が導体等に加わります。往復すれば一日2回、夏の暑い日は乗らなくても一回。銅も金属ですので繰り返し荷重を受けるといつかは疲労破壊による破断が生じて断線するかもしれません。自動車の場合は、家電よりももっと使用環境条件が厳しそうです。へばりついている半田にとってはさらに厳しい条件です。

そんな自動車の基板上の回路が破断した時、自動車メーカーは何が起こるかもきっとしっかり実験したり回路シミュレータでいろんなケースを再現して把握しているのでしょう。

2019年5月末現在、同じような複雑なシステムのトラブルで事故を起こしたと思われる B-737MAX や F-35A の墜落原因は未だ判明していません。

# B737MAXの原因を何にするかは概ね腹づもりは出来てきているらしいですが、きっとどう切り出すかを思案中なのかもしれませんね。そう、ほぼ万人が納得する正当化のための理由付け作業中です。

 飛行機はかなり詳しく、自動車も、飛行機ほどではないにしても、現在は動作のエラーを記録する装置が付いています。それでも全ては記録していないだけに、私のような天の邪鬼は、システムのエラーは記録されておらず問題はなかった、というセリフを聞くと、冒頭のお話が頭に浮かんできてしまいます。

さて、日本では、科学捜査が欧米ほど普及していない気がします。全ての可能性をしらみつぶしにするのは所詮欧米の科学捜査ドラマでのお話。実際は、手元の手に入っている限られた手持ちのデータの中からシナリオを作って有罪にもっていきます。直接事故を扱う警察機構も、1つゴールが決まれば、以降の類似事故の原因は全て右向け右、な感じがする、と言ってしまうと言い過ぎかもしれません。調査に時間がかかる、結論までに時間がかかっている、ということは、担当者の方は何かに悩んでおられるのかもしれません。いずれにしても、原因の明確な証拠がなければ、自動車に限らず、操縦者のミスになるのが世の常。

最近、まるでアイロボットの掃除機のように、すっかり動く家電になってしまった自動車。みなさんのご自宅のアイロボットはお元気ですか?

ブレーキの踏み間違い、とされる昨今の高齢者による自動車事故。これまでも同世代の人は運転をし続けててきたのに最近はなぜ事故報道が増えているのでしょうか。まずはブレストの入り口です。

・割合は不変で実際に高齢運転者人口の実数が増えている。
・高齢者各年齢の運転に対する質が現代では低下してきた。
・単に死亡事故件数が減少して相対的に目立つようになった
・従前よりも運転者の運転期間(上限の年齢)が進展した
・高齢者事故にマスコミが注目して報道機会が増えた
・ものを大事にする昭和世代が家電自動車を使用し始めた

などなど。もしも仮に、一般家電のようになってしまった自動車の総合システムとしての劣化が原因(家電化自動車固有の問題)だったとしたら、事象の結果として一件関連があるように見えている(相関が高くても直接の原因とは言えない、それが数学と工学の違いかも)年齢による運転制限よりも、使用状況による使用年限(自動車賞味期限)を制限する法律を作る方がはるかに合理的かもしれません。

事象を、直接関係ない場合でも、年齢や性別ですぐに分けてしまうよい例は医学によくあります。とくに、ホルモンなど性差固有の理由でない病気の発生率に、性による分類をしても全く意味がないどころか、誤解を招くだけです。つまり、科学的に正確でない表現とは、高齢男性は血圧が高い→血圧が高いと動脈硬化が起りやすい→動脈硬化が起こると脳梗塞がおきやすい、を、男性は脳梗塞になりやすい、と表現したときのときの悪影響です。もちろん、インパクトがありわかりやすい簡潔な表現には意味があり効果的で重要ですし、よき国民は難解を批判し簡潔さを好みます(ポピュリズム)。

そんな場合には、いよいよ自動車にもHUMS搭載が必要になるのかもしれません。その頃にはコストも下がっていれば、の話ですが技術的には十分可能性はあります。とりわけ自動運転後進国の日本のメーカーが先導して採用するか、については大きな疑問ですが。

でも、そもそもそういう事故を防ぐための夢と希望の自動運転技術が、電気制御自動車というその開発、導入の過程の時期で、現状、その一番の対象者でもある運転技術が低下した運転者群の排除を促進することにつながりかけている、というのは、工学の目指すべき社会の福祉的には本末転倒でなんとも皮肉で変な感じです。

 

電気製品の故障に痛い目にあった経験のある人は何と無く今回の趣旨を理解していただけるかもしれませんが、そうでない人も、3-5年以上の長い期間おなじ自動車を運転している場合には、実はいざというときに役立つのは、ドライブレコーダーで記録すべきは操作している自分の足元、という気にならないのでしょうか。それを記録してくれるのは自分自身だけです。家電自動車は三年経ったら買い替えどき。そうでなければ、、、、

ドラレコで、記録すべきは自分の足元

 ま、そんなことを実行する人はドラレコの目的外使用をするという常識のない変人、奇人です、変態です。

もし仮にそんなことを実践する人がいて、万が一にもそのひとが暴走事故を起こすことがあった場合には、記録動画を確認して、そして自分が踏み間違えていたのなら、当然潔く責任を採るしかありません。

今後も、自動車の経年数や運用状況などには見向きもせず、「また高齢者が事故」、「下肢に機能障害があるくせに自動車を運転するなんて非常識」、という非難。そしてそれが故、事故原因は運転者の操作ミスで、早期免許返納運動が活性化して今後は安全第一で、高齢者等の運転手排他運動が進んでいくことでしょう。

もちろん上述の懸念はとっくに調査されていることかもしれません。だからこういう工学的発想を自身ででできれば、ネット上で答えを見つけることができるでしょう。その課程で得るものは多いはずです。社会の問題をきっかけにしたそういう練習課題としてはこの問題も非常にいい工学的課題と思います。あくまでも本話題は科学的証拠もなく可能性だけの机上の想像だけの工学的なお話なんですけれども。。。。ね。

 

安全なパーソナル移動用交通機関を制限なく老若男女万人が利用できる未来が1日でも早く実現することを本当に願って止みません。

 

追記(2019/06/03)

さて、この話題を投稿した週の週末(1日)、無人自動運転の横浜シーサードラインの車両において、逆走発進車止め衝突による人身事故が発生しました。これまで1989年夏の開業以来大きな事故のないシステムの突然の変調です。あってよかった車止めダンパー、です。機械的バックアップ安全装置がなければ死亡事故になっていた可能性もあります。車両については、現在使用中のものはおそらく最古でも2011年の使用開始(8年間強の運用歴)と思われます。今回は運転手がいなかったので、直接の人為的操作ミスの可能性は明確でゼロです。これが航空機事故だった場合には、同産業の信頼性を維持するために、機材固有の事故かも含めて、事故原因究明と対策が完了するまでは全機飛行停止になることが多いケースです。日本では、航空機以外では事故復旧が終われば運転を再開することが一般的のようです。普及し始める自動運転の信頼性と安全性のために、日本ではどのような適切な対応が取られるのかも含めて、原因の究明を機械工学的関心から個人的には注視しておきたいと思います。みなさんも、システムというものの観点から見守ってみてはいかがでしょうか。

追記(2019/06/04)

国土交通省の早期運転再開の意向を受けて、おそらく大阪市営交通南港ポートタウン線ニュートラム住ノ江駅車止め衝突事故(1993)対応の前例を根拠に、中国温州市鉄道衝突脱線事故(2011)に遅れること1日の事故発生後3日で有人運転によって営業再開しました。二つの前例でも機械的原因は不明のままですが、そう考えるとコメット事故に対する英国政府対応は技術の進化という意味でも秀逸でした。今回は(も)、おそらく制御器全信頼で、機械工学らしい基本的な制御システムのフェールセーフ設計思想の十分な理解という観点では、設計意図が気になるところです。もちろん、大学でもそんな設計思想教育をきちんとはしていないですし、確認、なんていう言葉も廃語です。企業でも(ベンダー)会社に選る(あるいは依る)でしょうから、こんな事例はこれからもどんどん顕在化していき企業責任として重く経営にのしかかっていくのだとは思います。でも、国交省の事業者への注意喚起、というのもなんとも複雑な気持ちになります。ちなみに、本研究室の自動風洞実験システムには、独立系緊急停止シーケンス実行装置が予定されています。

というわけでやっぱり、ドラレコは足元を!、です。