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ブレグジットと大阪都構想~日英ポピュリズム比較が注目
2019年3月末現在、欧州では、”世界初のポピュリズムの成功”、ともいわれる英国のEU離脱が近づいています。
まず、ポピュリズムとは何でしょうか。ポピュリズムは、民主主義の制度内で発生しうるひとつの現象です。民主主義は、広く民衆に権限を与え、その相違を選挙という形で世の中の決定事項、すなわち政治に反映させる制度です。したがって、民主主義では多数派の市民の意見が通りやすくなっています。これは素晴らしい制度なのですが、民主主義を高度なレベルで実現するためには、実は教育が必須と言われています。
たとえばそのままのタイトルのジョン デューイの著書が市販されていますのでご参照方。
よく、独裁者や、そんなたいそうな問題ではなくても、社内など組織の運営でも、悪意のある決定を行って、規則に則った決定なので問題はない、と仰る方がいます。一般に、善悪は規則には明確に規定されていないので、悪意のある判断は民主的な制度では簡単に成立します。性善説に基づけば、悪い人が半数を超えることはない、ということなので、普通は制度を決める人が自らを悪とは想定はしませんので、善として制度を作成します。知識ある政治家官僚であれば、自らを律する法律を目指すとは思いますが。
一般に、規則や法令は、何かをしてもよい、というためにあるのではなく、権限に対して規制するために制定するのが筋です。そもそも規則になければ、何をやってもいいと思っているのが一般的だからです。したがって、「お墨付きがもらえる」、「現場で運用しやすい」、とりわけ「規則に従って実施決定しているから正しい」、という発言は、赤信号です。
したがって、民主主義が成功するためには、民衆が決めたことを簡単に変更できないようにすることもブレーキとして重要な機能です。逆に制定、改定するときには、非常に熟考して、様々な浴内運用を防止する法律を作る必要があります。日本では話題になった法案も、後日こっそり改定されていることは多いです。専門家でも特に法学者は、このような問題を常にチェックすることが社会的責務でした。
ポピュリズムや独裁政治は、こういう背景から、まずは邪魔な専門家や教師のような高学歴者を始末するところから始めます。その方法は様々です。有名なカンボジアにあったポルポト独裁政権では、様々な専門家や学校教員を見つけた時点で片っ端から銃殺刑にしたそうです。ドイツのヒトラー政権では、民族的な対立を設定し、人種を理由に処刑し、その他不都合な人材も、人種に関連して、裏切り者という位置づけで処分しました。日本でも、隣組制度などを利用した憲兵の話は、公共放送のドラマなどでも見たことがあるのでご存じでしょう。
さすがに現代においては、我が国のあるアジア諸国やその他途上国をのぞいてはあからさまな処分はありませんが、毒殺、暗殺も含めて、社会的に葬ったりすることは横行しているようです。あぁ、近隣諸国のことですねと思ったあなた、それは間違いです。我が国でも、現代では殺害しないまでも、役立たず、馬鹿扱いをすることで、大衆の心理的満足と社会的無視を生むことでも専門家や有知識社たちを抹殺するなどの方法がとられます。身近な組織内でも、パワハラなど様々なハラスメントはあるいみ抹殺活動のひとつです。大きくはトップの覇権争いはそういう意味では非常に卑近な事例で、醜い民主主義の恥部とも言えます。選挙は定期的に行われる覇権争いです。高尚な選挙であれば政策の利点を訴えますが、相手の欠点を連呼したりするのはまさしく民主主義の失敗例です。暴力でもハラスメントでも権限行使でも営業活動でも、自分の利益を得るにはそれくらいは当たり前のこと、という思想が常識になっている環境が、教育の失敗の証拠です。
ポピュリズムを利用した独裁者の場合は、そういう活動を正当化、可能にするために、まずは法令制度を変更しないといけません。したがって、ある時点で多数の票を獲る必要があります。そのためには、悪徳商標と同じで、耳障りのいい言葉や、具体的な手法を伴わない夢を時勢に合わせて語るのが一般的です。悪徳商法ならば、虚偽があれば民事で争える可能性はあります。しかし、特にレベルの高い政治家には、性善説と選挙というツールがあるので、一般には何ら責任を問うことはできません。つまり、選挙に勝つことこそがお墨付きとなるわけです。場合によっては、選出された他派閥の議員すら味方につける対象になります。取り込みか中傷か。本来は信念を持った政治家ばかりのはずですが、日本では、現実には、生活をかけた職業政治家ばかりですので、取り込むことは欧米よりも容易と言えます。これは、別にひどい独裁者ではなくても、自分の思い通りに事を進めたい(権力を自由に使いこなしたい)政治家にも当てはまります。
さて、ブレグジットにもどって、なぜ国民投票(住民投票)を実施して決定したのに、今頃になってグズグズしているのでしょうか。
上述のような独裁政治家ではなくても、充分な教育を受けていない国民、あるいは、難しいことはわからないと豪語する選挙民の割合が多いとき、民主主義は、非常に無知なリーダーが判断を行ったときと同じ効能を発揮します。その判断には、都市伝説や正体がわからないにもかかわらず夢を見るような話が社会に広がったとき、感情的、感性的、直感的に二択の判断をする場合に起こりやすいです。まさしく今のブレグジットは、離脱が近づくにつれて専門家が指摘していた問題点について、だんだん情報が出てきてから、そのリスクに気づきだしたからです。なんかわからないけどEUにいいところ全部持って行かれているような気がする、ドイツとフランスだけが得してるンじゃぁないか、などといういろんな憶測、都市伝説で判断して、今、「え、そんなの聞いてなかった!」状態です。
きっと様々な専門家は、ほぅら、だから言ってたのに。みなさん、専門家なんて信じないって言ってたでしょう。と思っています。はっきり言って、有権者の勉強不足です。
このような状況で、いずれにしても、都市伝説と雰囲気に飲まれた国民が、民主主義の選挙を使って、国民の意思、民主主義の勝利だ、と喜んで判断されたEU離脱の決定が成立したことが、世界初のポピュリズムの成功、といわれているようです。政策が成功したとはいっていないようです。
さて、今本法人設立団体である大阪府、大阪市では、EU離脱ほどメジャーな話ではないですが、大阪市を解体して大阪と西用、という選挙が始まりました。大阪とになれば、二重行政が解消し、無駄がなくなるのですごくよくなる、ということです。確かに重複がなくなって税金を効率的に運用することはすごく素晴らしいことです。一方で、大阪市民は、大阪市という自分たちを直接面倒見てくれる自治組織を失うという意味では、セイフティーネットを放棄することになりかねません。でもそのことを聞けば、いえ、そんなことは起きない、きちんと面倒を見ます、という答えが返ってきます。でも、そうであれば、無駄はいったいどこで解決するのでしょうか。いえ、そもそも、うまく運営することこそが大切で、大阪市をなくす意味はあるのでしょうか。というか、府市統合を行わなくても行政の運用を見直しただけで行政赤字縮小に成功しているのに、都にならなければいけない、という主張も少し矛盾を感じてしまいます。それに、東京都のように大阪を都にしたとき、いろんな負担は増加しても経済的基盤に大差がありすぎます。「東京都のように大阪も都になれば、、、」という前に、大企業の本社を東京都並みに誘致しておかなければならないのかもしれません。大変革を急がなくても今しばらく現行の改革を続ければよいとも思えます。
このことは、最近の科学論文等々でも、そもそも実験(研究)計画がおかしくはないか、と思う状況ととても似ています。著者本人は、自分の考えにどっぷりはまっているので、問題のポイントを取り違えて、もっとも効果的な手法やデーターの整理方法をとらず、誤った、あるいはそこまでとは言わないまでも、複数のパラメーターが混ざった分かりにくい変数で整理して、何かがわかった、あるいは、なんとなく結果が出た、といっているような感じです。
つまり例を挙げれば、体重が影響ある問題に対して、直接体重ではなく、男女という性別で整理しているような場合です。本質は重量なのに、平均重量に差があるパラメーターで整理すれば、結果が曖昧になるものの、一定の結果が出ます。これは、実験計画法的には過ちです。
というわけで、あと二週間で大阪都構想計画が承認されそうです(正確には、承認される可能性がある選挙が実施されます、です。)。
イギリスのブレグジットと大阪の都構想。
イギリスでは、別にEU離脱でメイ首相らが覇権を握ろうとはしていませんので、独裁などとは関係なく、かなり純粋にポピュリズムの事例に見えます。そういう意味では政治レベルは高そうです。大阪の選挙では、どうなのでしょうか。
スケールは比べものになりませんが、歴史の評価が定まるいつの日か、比較して語られる日が来るかもしれませんね。
注目の選挙です。