機械工学
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寸法公差と、サイズ、位置の公差とはめあい ~ GPSはもう来てる その3/3
寸法公差と、サイズ、幾何の公差とはめあい その3
最期に、はめあい。
『機械』とは『複数の部品で構成され、相互に運動し、機能を達成する』ということを考えれば、それに最も深くかかわっているのは「はめあい」かもしれません。
摺動するのか、位置決めするのか、しっかり固定するのか、容易に脱着するのか。
はめあいは、基本的には英字と数字の組み合わせでできています。英字は図示サイズ(旧 基準寸法)との関係をあらわすサイズ公差域、数字は公差クラスを表します。はめあいの軸脚はエッチ(H、h)です。エッチのとき、公差の片側寸法が基準寸法に一致しています。公差の相手側寸法が基準値にぴったりの場合です。メス、オス、それぞれは、英文字の大文字、小文字、で区別します。普通の生物の多くのようにメスが大きいことになぞらえれば忘れないでしょう。
はめあいにはその部品の生業から、主従の関係がなんとなくあります。例えば、消耗品や交換部品側は、図示サイズに対してはまり具合のきつさを調整できるので、実際のサイズが図示サイズにはなりにくいとも言えます。たとえば設備のモーターがあった場合、それを利用する様々な装置は、継ぎ手(カップリングなど)の穴が加工指定できることから、従の立場にあるとも言えます。でも、軸の仕様がhでなければ、モーター設計者は穴基準を想定しているのかもしれません。それはつまり、継ぎ手が標準品で市販されているからでしょう。
このとき、エッチが軸なら軸基準はめあい方式、穴なら穴基準はめあい方式、と呼ばれます。キーとキー溝は、キーがJIS規格品なので、キー基準でhになっているようです。はめあいのきつさは、そういうことをいろいろ諸々配慮して、最終的には設計者が判断すればよいです。したがって、基準でない方もエッチであることも普通にあります。
ちなみに、中間ばめは、大学研究室レベルの頻繁な、学生による、機器故障・部品破壊防止に配慮した脱着作業には少しきつすぎます。個人的には、ガタつかずに楽にスッと入るのは、少し余裕のあるすきまばめでないと無理です。
はめあいの用語ですが、そもそも、穴と軸、溝と棒、凸(デコ)と凹(ボコ)ですむものを、何故、オス、メスという生物学的な雰囲気の用語で表現しているのか。英語では fitting 、あてはめ、調整、です。その起源や理由はおそらく永遠に公的な教育機関では語られることなく、やがていつかは、英語化されたりして廃語になっていくことでしょう。
最後に、残る数字表記ですが、これは公差クラスです.公差は一般的な機械加工程度であれば7が標準と考えておくとよいでしょう。
押さえどころに長けた学生さんなら,メスとオス、その公差クラスにざっくりした法則があることも見えてくるでしょう。そういうポイントを押さえて調査、知識吸収する術を身につけている人には、こういった規格を見ても、そうでない人と見えるものが変わって見えて、規格の概要をさっと頭に入れることができることでしょう。
以上のような規則の背景から、エッチ7、は図面上によく現れます。
はめあいは エッチ7から 締め緩め
以上のようなことを足場にして少し図面をいろいろ見て思いをめぐらすことができれば、少しは図面から設計が見えてくるかもしれません。なぜ、本課程で利用しているPTC社の3D CADはパラメトリックデザインなのか、それを使った効果的な教育方法がどうあるべきか、ということも見えてくるでしょう。本当の設計の勉強は、空間に形ある部品をどうやって必要な位置に固定するのか、そしてそれを、どう他の人に伝達するのか、という作業です。昔なら個別にした作業が、いまはモデリングという設計作業に組み込まれ一体化しています。効率的ですよね。
まぁ、これらのことが全く理解できていなくても、本課程の設計関連の成績はA、A+が得られますので、この記事は、本課程の大多数を占める卒業至上主義の学生さんには、暖簾に腕押し、賢く柳に風、馬耳東風、といったところでしょうか。製造業での機械設計者にほとんど関心を持ったず、製品開発のマネジメント志向で、「ものづくり」で ”社会貢献を目指す”、そんな学生さんの多い本課程では、当然、企業の人事担当の方も、機械に関する基礎知識やましてや造詣なんて期待せず、企業の社会貢献業務に対するモチベーションに溢れた人材としてご評価いただいているようですので、学生さんも、卒業に直接関係ない本記事には適当にスルーし、貴重な時間はより集中的に数学、力学の勉強へと向け、そしてその成果を研究に活用して、優秀な研究者を目指してください。現代では、特注の実験装置が必要でも、こんなことがしたい、と業者さんに伝えて発注すれば、ほどよい装置が納品される時代です。企業内評価に使える程度の研究成果だって100万前後の資金から買える時代です。卒業研究に必要な機械製作にも、機械設計や製図の知識の割り込む余地はなさそうです。
余談ながら、企業によっては、「研究」という言葉を「開発・設計」などに充て、「設計」は何かわからない維持作業業務に充てている企業も多いようですが、それは研究が主体の組織である大学と、製品製造が主体である企業との文化の差であり、隠語化しているものと思います。業界によっては、設計部門が花形である企業もあります。たとえば自動車業界では,一部職種が2017年度に比べて目立ってニーズが高まっているようです。機械系の範疇では、実験・評価・解析(+25%)、機械設計・金型設計(+10%)、生産技術(+35%)、品質管理・品質保証(+21%)、研究開発(-12%)、など(2019年1月の中途採用状況)、いずれも電気、ソフトの知識がある方が有利のようです。中途採用はそもそも新卒採用の非力を補う傾向もあるので(だから実験や設計は補充が必要なんですね),新卒採用にどれだけ当てはまるかはわかりませんが、就職の際の配属について企業採用担当者と話をする場合や、希望部署を記入する場合には、必ず会社ごとに部署の性質を確認するようにしてください。本課程卒業生で、真に機械設計に関わる部署を持つ企業に採用決定された場合には、設計業務を担うかどうかはよく相談した方がよいと思います。たとえやがて消えゆく図面でも、「図面をかかせれば設計が学べる」という今の教育指針では、図面が書けない人にとっては製図はきっと、図面を使わずに正確に形を伝えるという職場環境が、より設計を理解、習得することを困難なものにしていくかもしれません。
それでもなお機械のことを勉強したいのなら、覚悟を決めてから、本研究室の門を叩いて本研究室提供テーマの履修選択を相談してください。
でも ま、なによりもまずは機械や製品の形に興味を持つことです。
機械→構造→機構→部品→機能→工作法→形状、、、
その先に機械設計があるとおもいます。何事でも、興味がなければ面白くない、面白くないものにいくら時間をかけてもプロになれるような知識や思考は身につきませんから。興味のあるものがない人は・・・・きっとそういうことです。そういう人は、興味あることや目標が見つかるまで、じっくりこれまでどおりの勉強を継続して単位を取得し続けるために、米国のように、ダブルディグリーや複数の博士号取得、研究生など、授業料を払い続けて、是非本法人に貢献し続けてください。