機械工学

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渦って何ですか?[2] ーーー 回転物体上の運動への準備

2018年、冬。今年もフィギュアスケートのシーズンが始まって、日本チームは男女とも新陳代謝をしつつも優秀な選手が活躍を続けています。すごい人材育成力です。

みんなで支える公共放送局でも、その名を掲げる大会があるので注目されます。スピンの技術についても取り上げられたりしますが、その解説がとっても秀逸です。「広げた長い手を縮めることによって、遠心力が増してスピンの回転速度が速くなる。」そっか、そうなんだぁ、さすが教育チャンネルを運営している放送局だけのことがあり、説明も物理的っぽい!※1

義務教育最終の中学校理科では、円運動に関する物理は、気象のところでかすめているようです。それ以外の物体の運動力学は質点の運動くらいです。ちょっと具体的には、赤道から上昇した気流は地球の回転によって西に偏向します、という程度です。この力の質や特徴については問答無用です。その実態は高校物理まで持ち越されるそうです。

流体工学でも、スケールの大きな流れではこれらの力の影響が効いてきます。まさにその例が中学理科の気象です。でも、最初に登場したスケートのスピン程度の運動では、これらの力は工学的に無視できるオーダーです。渦の巻く方向が北半球では云々は、今では怪しい話であるということになっています。

さて、表題の回転系の運動です。回転系では、静止系から観察すれば単純な運動も、相対座標上で観察すると見かけの力を働かさなければ説明がつかなくなります。遠心力やコリオリの力、オイラー力、などです。保存則からも、絶対座標系から観察しても、回転運動量の保存、によって物体の運動は影響を受けます。回転運動って、面倒ですね。

回転の運動系で物体を扱う場合、物体と観測者の立場によって登場するものが変わってきます。まず自分が扱う対象について、物体の運動、観測者の運動が、それぞれどこにあるのかをしっかりと仕分けしておく必要があります。まずは定常運動について考えると、これを組み合わせで単純に分けると4つのケースに分けられます。

 

1のケースは、回転とは無関係なのでここでは省略。
2のケースは、観察者が回転していないので、物体がほどよい向心力によって随時半径方向の力を受け、円軌道を運動する場合です。物体は回転しているので角運動量を持っています。
3のケースは、気象を始めよく取り上げられるケースです。物体は普通に低速度運動をしていますが、観測者が回転しているので、見かけの力を受けて物体はぐるぐる回る必要があります。
4のケースは、相対的には同じ座標上ですが、ともに見かけの力である遠心力を受けています。物体は回転しているので、角運動量も持っています。

さて、今回は物理のお話です。思いつきで書き下ろしたので、吟味は追々です。

非慣性系、回転系の慣性力から、渦や気象の話までさらっとお話ししようとしましたが、ちょっとかさばりそうです。今回はここまで。次回は座標系の話から続きをお話ししたいと思います。

※1 もちろん優秀な本課程の学生さんは、数学と力学を十二分に学んでいるので、半径方向力である遠心力がいくら増えようが、その力によって回転速度が増加することは、如何に量子力学が身近になったとしても未来永劫ないことにお気づきでしょう。スポーツ専門サイトでも、遠心力によって回転の勢いがつくと誤解できる表現がいまでもまれに見られます。回転速度が増したら、その結果として、遠心力は大きくなるもので、それをうまく利用すれば姿勢は安定しますけどね。