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全国の高校教員(および高校教育関係者や保護者)に告ぐ ~ 進路指導

 機械系学生の動向についてはほかの記事でも取り上げています。
以前のアンケートでもこのことはわかっていましたが、  学生さんと話す中でさらにはっきりとしてきたのは、  最終学歴に向けての進路指導において、  成績がよければ、そしておそらくその科目によって、  学生の適性も何も考えずに志望先を勧めているケースがかなり多いことです。  しかも、学生の賛同(重要事項を納得させた心からの合意)を得ずにです。  重要事項の納得がない取引やサービスの契約は、現代社会では大きな問題になる事項です。そしてそのような状況が、 人生を左右すると多くの人が考えている進路相談の場で起こっているということです。

 

これは高校の教員だけの責任でないことはわかっています。  おそらく、家庭教育の中で、いろんなものを解決せずに先送りし続けた結果がこのような状況を招いているのではないかと憶測します。  これによって、家庭教育が担うべき曖昧で広義の「教育」を、本来学問の教育を主体とする高等学校とその前線にたつ教員へと押しつけた結果、業務が破綻してこのような状況が生じていることとも思います。初等、中等学校では、必要であれば保護者にそのような部分の仕事は、胸を張ってお返しすべきとも思います。そうすれば、需要に合わせた新しい教育産業だって生まれるかもしれません。そもそも現代の複雑な社会情勢も踏まえて幅広い業種に適切な分野や、中身や名前がころころ変わる大学の学域学類に関する知識までも十分理解しているスーパー教員がどれほど存在できるというのでしょう。しかしここではこれらの教育現場における問題や解決方法は横に置きます。

 

進路指導でやっていただきたくないこと

成績だけで学生を工学系へと薦めないでいただきたい。
特に、以下の理由で機械系には勧めないでいただきたい。

 

「機械系に行っておけば、つぶしが効くので、いろんな会社に行くことができる。」

 

これは大きな間違いです。NGワードです。
もし、このように勧められた人は、その時点でそのような進言をする人以外を探すか、自分で考えるという選択をしてください。現在ではこのような進路指導が多く行われた結果、当然の帰結として状況が変わりつつあります。そもそも、機械系出身者が「つぶしが効く」という状況だったのはなぜでしょうか。それは、きちんとした動機を基に、機械に興味があり、「ものづくり」やその産業の社会への影響などではなく、設計やそれに必要な様々な技術に関する知識蓄積に興味があり、その結果、幅広い知識を持っている人がそのようなことに関係する仕事を目指そうとして、目的達成のために勉学しようと「機械工学」の専門課程に多く集まっていたからです。そうでない人がそのような分野に紛れ込むと、どのようになるかは火を見るよりも明らかです。そのような人が多く混ざった教育の場に何が起こるかは、高校教員の方々なら十分経験済みで想像に易いと思います。研究と教育を兼用しているような組織ではなおのことです。もちろん、適性と教育の場の関係は、機械工学の分野に限ったものではありません。

 

では、進路はどうやって決めたらいいんですか?

 まずは動機付けです。人間行動学、経営工学、技術経営(MOT)などでも、外発的動機付けに対する手法が扱われ、動機が重要なことは系統的な研究がおこなわれ、学問的にも確立され、手法も充実してきています。

 

大学4年間で見つければよい(今風の言葉で言う、自分探し?)という人がいます。興味もない授業や課題をこなすようなストレス状況下では、確率ゼロではないにしてもほぼできません。特に最近は、それを実現できたという学生さんは減少しています。そもそも、目先の成績を追いかけさせて安心していた中で内発的動機付けもうすく、達成動機付けもなければ、大学の授業あら自ら見つけることは困難です。何よりも学生さんにとって大学4年間の貴重な時間そのものが重圧、足かせになっているのにそんなことを解決できるでしょうか。これらの動機付けは個人の個性でしょうから、学校主導では効率的には達成できないでしょう。

 

生徒の可能性は無限大だ、なんていう人もいるでしょう。でもそれは無責任すぎます。大きな可能性を持っている人は、18歳にもなればその片鱗が見えているはずです。それがわからないのであれば、工学ではなくその可能性を生かせる可能性のあるところを勧めるべきでしょう。
 
就職すればみんなきちんと仕事をしている、という人がいます。
果たして本当にそうでしょうか。
# ここは「技術伝承」に悩む企業の方の意見にお任せします ^^;

 

入学して1年は転学域、転学類も可能ですが、  18年間見つけられなかった人がたった一年間で見つけられる理由がありません。  違う分野に転向できない中で、いったい学生さんは何を考えるのでしょうか。 結局、転学域のチャンスも逃し、うすうす違うと感じたときには、 一生その道を進むか、4年間を棒に振るかという二択しか残っていないのです。両親に「やっぱり別の大学に入り直すよ」、あの禁欲的な受験勉強に「もう一度挑戦するよ」、といえるかということです。 もっとも、依然として漠然として迷っている学生が多いというのが実情でしょうが。

 

先送りする環境の中で、先送りしても周りから大丈夫っていわれながら、ほんとにそれでいいのかなと疑問を持ちながらも育ち、やがて先送りでいいやって思うようになってしまった人にとって、  就職が近づくにつれて忘れていた不安が擡げてくるようです。ま、わかりますが。昔でも似たようなことはあったと思いますが、  程度がかなりちがいます。

 

高校教員の皆さん、進路指導の際に学生さんのそんな気持ちを想像していただいているでしょうか。

 

 そもそも機械や特定の産業、製品に興味のない人は、前述の理由から工学系よりも理学系に行くことをすすめます。高校までは基礎科目を学んでいるので、その範囲でのみしか得意や嗜好が明確でないなら断然、理学系です。数学や物理学などの基礎科目をフルに活用するのが理学です。
 最近は、メーカーでも基礎科目の知識を求めて理学系出身者を採用する企業が増えてますので、。就職においてもミスマッチの機械系学生よりは不利益がありません。現代では、基礎を確実に身につけている方がはるかにつぶしが効きます。公務員である公立や私立の教員も目指せます。うまくいけばノーベル賞だって目指せます。何よりも、入学時の分野の選択肢が少ない、裏返せば、一つの分野の可能性が広いのもおすすめです。機械系にいるよりも、何の悩みもなく得意な学問の能力発展に集中できます。基礎力さえついていたら、工学に目覚めてから大学院受験時に転向しても遅くはないでしょう。

 

そもそも、動機付けはいつ

 現在大学では、科目の接続教育や、ミスマッチ緩和対応の自分探しのためのセミナー形式授業も行われています。大学の立場は、もちろん大学にも経営事情がありますし、文科省からの定員充足や超過に対する厳しい指導と査定もありますので、転学域というより、興味を持ってもらって継続してもらうことが前提でしょう。これらは、4年間かけて各自が自分の考えでするよりはましかもしれません。しかし、効果があるかどうかは追跡調査も公開されていなですし現状を見ると疑問が残ります。
何よりも大学に入ってからというのが問題に思えます。やはり一番は、たとえ高校卒業してすぐに大学に入らない状況になるとしても、大学に入る前、です。さらには、小さいときからその年齢に合わせて順番に動機付けを達成していくことが大切だと思います。もしもこれを読まれた保護者の方がおられるとしたら、もう先送りは今すぐやめて、少しでも早く人任せではない保護者の立場で対応考え、そのための行動をはじめていただきたいものです。一に本人、二に家族、三、四がなくて五に学校?できればほかの詳しい人に。
# 子育てや家庭内教育のCOTSに歯止めがほしいものです。

 

進学後、上回生になってから多かれ少なかれ悩みを抱え苦しむ学生を、少しでも減らすためにどうぞよろしくお願いいたします。
ま、個人的な雑感ですが。。。。。