雑感
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企業立学校のススメ
企業立学校のススメ
新卒採用の時期も、紆余曲折してそろそろ落ち着くのでしょうか。
各企業の採用ご担当の皆さんは、今年も選りすぐりの優秀な人材発掘にお忙しいことと思います。
そんなことを書けば、大学は気楽でいいよな、もっとしっかり人材育成してくれよ、と思わず口から出てしまう、という光景がネットの向こうのディスプレイの前に見えそうです。
最近は、大学の成績もあてにならず、そのくせ、推薦で不採用にすると嫌味を言われる。採用しても、再教育のように全てを一から研修、いえいえ、ゼロからでしょう、といわれるほどに、再教育に工数がとられ、将来の人材への投資と思って手間暇かけたら、辞めていく若手社員が出てくる。
公教育の信頼度も低下しつつあるのでしょうか。
そんななか、大学授業料のローン化による高等教育無償化が具体化に向けて検討され、これまでに定員を増やしてきた大学の、少子化対策が始まろうとしています。
欧州、とりわけドイツやフランスでは、日本の高等教育に対応する年限(より若干、低めかもしれませんが)では、大きく2つに分かれる選択肢があるようです。一つは日本のような大学で、科学技術を物理数学を用いて科学する高等教育コース。そうしてもう一つは、ドイツでいうマイスターを頂点とする職業教育のように、必要な知識を学びながら、手に確実で高度な技をつけるコースです。
いくら科学が進んだ時代でも、その科学が数学や理科の上に成り立っていても、それを得意とはしない人がいるのは現状です。日本では、そのような人が社会、企業で役立たないわけではなく、あるいは、非常に優秀な能力を発揮することもわかっています。
ところが文部科学省は、そういう分野が得意な人が集まったエリートだからなのか、優秀な人材の道筋を高等教育一つに限定しているようにみえます。その具体的組織である大学においても、その構成員の評価基準は、自分たちの評価と同じ方向性を崩しません。
そのような状況の中で、もはや大学進学率が半分を超えているにもかかわらず、選択肢を増やさない単一のまま、大学進学の制度の敷居を下げるとどうなるのでしょうか。座学が肌に合わない人も、借金を抱える覚悟で、さらに大学で4年間我慢していまでも大学卒業資格を手に入れなければならない空気になります。ミスマッチが問題になっているのに、ますます大学の現場はカオティックな状況になり、さらに教育の質が保てなくなりそうに思えて仕方がありません。護送船団方式(廃語ですね)が成り立っていた時代は幸せだったのでしょうか。
そんな中で、企業はどうするのでしょう。
ならば、いっそのこと、公教育に頼らない、という選択肢が出てきてもおかしくなさそうです。そうです。企業立学校です。これまでも、鉄鋼や重工、自動車や重電、家電など高等学校や企業内学校はあったようですが、多くが廃止されたようです。ただ、本格的な高等教育学校はごく一部を除いて少なかったようです。
一番伸び盛りの15歳から20歳過ぎまでを、好きなように教育できることは、以前とは異なる現代の状況を考えると、企業にとっては大きなメリットがあるのではないでしょうか。
# 本当は4~5歳前後から好奇心旺盛で自発的に活動する人材を
# 育てたほうが省力化できてよさそうです。
高校、大学の一貫教育でも良いですし、そもそも文科省の補助金を期待しないのなら、年限だって自由です。高校生相当以上なら、義務教育の規制もあたりません。設置審も関係ありません。規制緩和や特区すら関係ありません。認可を巡って、忖度で目まぐるしく判断が変わるややこしい官僚や政治家と調整する必要もありません。政治家と官僚の争いの影響を受けて補助金予算削減があっても関係ありません。金銭的自立が運営の自律を支えます。
独自の教育内容が、既存教育などを参考にいいとこ取りで効率的にカリキュラムの構築をすれば、日本の他の高等教育機関にない独自の評価を獲得できるでしょう。短い年限で目標を達成すれば、卒業生の引受先は自社にとどまらず引く手数多です。
そこで、文科省の認可を受けないメリットで資金回収も可能になります。卒業生を、能力や成績に応じて、スポーツ選手の移籍のように、金銭補償を受け入れ企業の求めれば、学校運営も安定し、運営企業のよい人材の確保も楽で安定し、移籍先の企業も満足、何よりも、そのためにも優秀な教育を受けられる学生に大きなメリットがもたらされます。まさしく自由主義経済下の高等専門教育学校です。文科省のお墨付きを得なくとも、ユネスコの目指す高等教育の宣言に従えば、文科省管轄の大学よりも先に、真のグローバルな高等教育学校になれそうです。
http://ad9.org/pegasus/UniversityIssues/AGENDA21.htm
いまこのような学校ができれば、目的意識がはっきりした学生が集まりやすく、たちまち優れた人材が集まり、経営効率のよい活力のある学校になりそうです。需要が増えれば、まずは同業種企業で、そして他業種複数企業で共同経営するのが効果的と思います。多少一時的に詰め込みになったとしても、文科省に指摘されることもありません。大学ではなくなったってしまった現代の法規や文化などの一般教養も復活させ、もちろん工学だけではなく、管理運営、経営者育成のコースも設置し、それぞれ企業を実習の場にしながら実践と座学、実習を重ねれば、普通の人材なら目まぐるしく成長するのは確実です。人材の海外輸出や、人材の世界からの青田買いも夢ではありません。
当然、現在問題になっている正式採用後の教育研修費用も大幅に削減し、しかも即戦力で活躍すれば、定着率も100%になることが容易に想像できます。
# すでに優秀な海外人材を採用している大企業も増えつつありますが・・・
なのになぜ、高等教育の企業立学校はほとんどないのでしょうか。公教育を当てにした人材育成のアウトソーシングが崩壊しつつあるとすれば、特に財力があり、将来の人材に不安を抱く大手企業には、これからの時代に向けて非常に大きなメリットがあるように思うのですが。。。。
いよいよ平成も間も無く終わることが決定したこの頃、そろそろ誕生しても良さそうですね。