電子レンジの使い方、選び方
電子レンジの使い方、選び方
チン!
今頃こんな音を立てる電子レンジは少なさそうですが、未だ一部年代の影響か、「レンジでチン(レンチン)」なんていう言葉は生き残っています。
発明は1945年、レイセオン社。さすがレーダーメーカー、世界の電子機器メーカーです。でも、設置技術者が、というところ、入念な観察結果(何を観察したんだろう)とはいうものの、結構、現場では危険なことしていたという感じが伺えますね。現代でも高出力位相配列型探索機の前を通過したヘリ内の人が一瞬、オーブンされかかったとか。一部で有名な爆発たまご、も 開発時に体験済みだったようです。日本でもこのころ、兵器開発技術者によって同様の機器はできていたそうです。
業務用発売当初(日本での量産型は1962年、54万円)はかなりのお値段ですが、1976年には6万円で家庭用がシャープから販売されて世界で普及したようです。今では、5000円程度から10万円くらいの商品として普及しています。
さて、殺人光線候補でもあったマイクロウェーブですが、この用語は俗語のようで、かつて人体(多分、水分子)と共鳴する波長の範囲、と定義する科学者もいたようです。センチ波、ミリ波、と同じよに波長で分類しているのではないか、と思われそうですが、マイクロ波長はサブミリ波と呼ばれているようで、しかもマイクロ波には含まれていません。結局定義が曖昧だそうです。電波の波長帯を表す場合にはあまり使わない方がよい用語のようです。電子レンジでは超極短波(UHF)である 2〜4GHz の電磁波(電波)を使用していて、一部携帯電話の周波数帯とも重なっていそうです。
電子レンジは、メイラード反応が発生しない加熱調理器という特徴があります。つまり、あっためるだけで香ばしい風味はでない。最近では色々オプション機能がついて、温めムラ(加熱ムラ)が少ない、温度を監視、などというフレーズも聞こえます。でも、それって盛りすぎではないでしょか?
電子レンジは、電波で調理します。皆さんも、電波を使った機器の使用経験が他にもあるので気づいてることと思いますが、電波は、いろんなもので遮られます。携帯の電波が弱いとき、どういう行動を取っているでしょうか。 電波は、高校理科で習ったように、一般に電気を通しやすいものに囲まれると遮断されます。電気を通すもの、導体は、代表的な金属の他にも、不純物を含んだ水があります。電子レンジは水分子を共振によって、電磁波のエネルギーを運動エネルギーに変換することで、食品をあっためるものです。
ここで少し気になりませんか?
水があるからあったまるけど、水があると電磁波は吸収されてしまう。
なんか矛盾しているふうにも聞こえませんか?
なんで。水があるからいいんじゃないの!
確かに基本的にはその通りです。でも、水の層が厚いと、水の表面に近いところで電磁波のエネルギーは費やされて、中の方の水はいつまでたってもエネルギーが届きません。電子レンジの電波は、上方や側方、下方からなどいろんな方式があります。側方の場合、ターンテーブルでクルクル回ってムラがマシになるようになっているようです。上方が強い場合には、コップの水などをあっためると大変効率が悪そうです。そう、表面だけがどんどん熱くなって、どんどん蒸発していくけども、それ以外は表面の水にガードされていつまでたっても温まりません。
ということは、よくある温めムラを考えると、これとおんなじ症状が出ていると思いませんか。
単純に電磁波で温めると、食品は表面しか温まりません。コロッケが重なっていると、下にあるコロッケは冷たいままです。中華丼や八宝菜も、深い鉢に入っていると、あんかけは熱いのにご飯は冷たい、下の方は冷たい、という結果になってしまいます。ころんとした豚まんは、そのまま温めると結構手強いかもしれません。
これを防ぐにはどうすれば良いでしょうか。汁物は上から温かくなる。シチュー、あんかけものも同じ。コロッケや餃子のような複数のものも重なるとダメ。
基本的には平たく並べるしかありません。電子レンジの電磁波は、ある程度の深さまでは届きます。その深さ以下の器に入れて温めるしかありません。え、その深さはどれくらい? マグネトロンはどこにあるの? 確かにそういう情報が欲しいですよね。
汁物は、30秒おきにかき混ぜるといいかもしれません。
あともう一つは、一旦、表面が熱くなったら電子レンジを止めて、熱い熱が冷たい部分に熱伝達、熱拡散するのを待って、再びあっためる手順を繰り返すことです。美味しいとんかつの作り方と一緒です。
同じ発想で、食品をラップで包んんだり、蓋をしたりして、水蒸気でくまなく全体から蒸し上げることです。水蒸気によって全体をあっためることで、上面のみではなく周りから熱を伝えることができるのでより効率的に熱が伝わりそうです。
でも、これでは、短時間で簡単レンチン、なイメージからは遠ざかりますよね。
残念ながら、現代の電子レンジには、まだ、食品をかき混ぜたり、順番を並べ替えたり、内部の温度を直接測ったりする機能がまだありません。
ということは、加熱ムラが少ないなんて、結構効果低いかも、って思いませんか?
以上のことを考えて電子レンジを使用すれば、そんなに高価で高性能を謳う電子レンジは必要でしょうか。まさしく、チン!な廉価でちょっとパワーに余裕のある電子レンジが一番いいかもしれません。
加熱ムラに悩んでいる調理担当者、および調理非担当者の皆さん。調理担当者の方は自ら実行すれば解決できるかもしれません。非担当者の方は、もし理解ある担当者であればこのことを伝えれば解決できるかもしれません。
「クックハンドが加熱ムラを防ぎます!」
そんな電子レンジが早くできるといいですね。
※ 多分、メーカーのいう加熱ムラ対策は、何も入れていない電子レンジ庫内の、UHF波の電界強度分布も一様性を言ってるのではないでしょうか。数値シミュレーションや文献も見つけられます。でも、それが成立するのは、点状の物体を庫内においた時の話で、一般食品の加熱ムラの防止策としては議論のすり替えでちょっと疑問が残る気がします。同じことを航空機、自動車などの輸送機器や原発設計で行ったらどう思うでしょうか。数値モデルで食品の熱伝導度や水分減少による誘電率変化にも注目したシミュレーションはされていますが、千差万別な実用との隔たりが理由で加熱ムラが解決されていないのはメーカーもわかっているようです。そういうことを考えると、エンドユーザーには、分布が偏っていても、集中したエネルギーで機械的に食品を動かして熱伝達を結果的に利用できている昔のものや廉価版の方が当面は効率は良さそうです。でも、解決法はあるので、2、3年後にはグンと性能改善して事実上、解決しているかもしれませんね。