梅雨どきの 換気方法 〜 機械工学的アプローチ

梅雨どきの 換気方法 〜 機械工学的アプローチ

結論がさっさと知りたい方、ためらわず最後に飛んでってください

工学に限らず、物事を科学的に合理的な論理にするためには、結局、世間で言うところの、ウンチクが必要です。ウンチクが面倒と思う人は、できるだけ決定に関わる仕事は避ける方が良いと思います。ついでながら、状況によらず、ほかの人のうんちくに感情的に耳を傾けたくたくないと思うひとも同様です。

では、うんちくを長々と。。。

夏も近づいて、梅雨がいよいよ本格的になりそうな時期になりました。2017年の梅雨は、6月下旬に入ったところで、カラ梅雨の心配が出ています。今日も雨は大丈夫かな、と思って窓を開けていると、朝起きたらしっかり雨が吹き込んでいて、朝にあわてて水をふき取ったり、なんていう経験はありませんか。梅雨どきでなくっても、夏や秋口にかけての夕立、最近では、冬の稲妻、寒冷前線にともなう冬の嵐なんかもそうです。

真冬に窓を開けるかどうかは別として、梅雨や夏には、窓を開けて換気による室温のコントロールをすることもありそうです。エアコン技術の進歩によって、電気代もかなりお安くはなってきましたが、多分電力会社にしてみれば、電力消費量が減少したら、インフラ維持費を含めて資金を確保するためには、絶対に電力単価を上げる必要になりますし、そうすると結局、負担金額は将来的には同等になるということでしょうから。

機械工学の一翼を担う流体工学には、損失という概念があります。小、中学の理科でいう、エネルギーの損失です。エネルギー保存則の中の一つの要素です。

空気や水の総称である流体は、圧力差があると流れます。圧力差が大きければはやく、つまり、勢いよく流れます。圧力差が小さければ弱く、少しづつ流れます。

部屋の換気には、この圧力差をうまく利用する必要があります。最近の、「呼吸する家」なんていうのは、設計するときから家の外形状まで考えて、この圧力差を利用しているはずです。その効果の大小が、性能の良し悪しになります。もちろん、家の立地条件も大きく称することも多く、風力発電に結構似ているように思います。

では、圧力差はどうやって作るのでしょうか。それは、家における風の入り口と出口の圧力差で決まります。普通は、風上からきた空気が、家にあたることで圧力が大きくなります。モデル的には、淀み点部分です。風上側で風が澱むところは圧力が高くなっていることが多いということです。いっぽう、風下側ではどうでしょうか。入り口と同様に、淀んでいるところは、一般的に圧力が動いているところより大きいことが多いです。もちろん、家やマンションのように複雑な形状なら、出口と思っていても、部分的に風上になっていることもあるので、そこはひとことでは言えず、少し難しいです。実はこのことは、風の入り口でも同様なのですが。

とにかく、風の入り口と出口が決まったら、家の中、部屋の中についても同様に考えると良いでしょう。

風は、家具や壁や床、天井などの壁面に邪魔ものがあったり、でこぼこしていたりするとエネルギーを失います。特に狭くなっているところでは、風の速度が大きくなって、同じでこぼこでも損失は大きくなります。

これは、窓の開け方でも同じです。風が強いからといって、窓を少しだけ開けると、かえって風が強く(風の速度が速く)なって結局窓を閉め切ってしまったことはないでしょうか。これがそうです。

損失が発生すると、風の流れる流路の断面積が同じなら、損失は圧力低下として現れます。ただし、この圧力差は、簡単にいってしまえば、入り口と出口の圧力差よりエネルギー的には大きくなれません。その制限の中でのお話と受け止めてください。ということは、風の風量は、最初の圧力差から損失で失う圧力差を差し引いた残りの圧力差に左右されるということです。

また、もしも、部屋を通り抜ける空気の量が同じなら、窓の開口面積は大きい方が風が穏やかに(ゆっくり)ながれます。

さて、以上の話を踏まえると、家を通り抜ける風は、窓を閉めると勢いが強くなる。でも、窓を閉めると風量は減少する。ということです。程よい勢いで風を取り入れるためには、このバランスが必要です。では、簡単に風をコントロールするのは難しいの?

穏やかな家庭内環境のために、問題は、生活の中では、出て行く風の勢いはそれほど気にならないことです。

カーテンが吸い込まれて外に出ることはあるかもしれませんが、入ってくる時のように、お部屋の中でカーテンが暴れたり、何かものが風に飛ばされたり、ということはあまりありません。それは、風が狭いところを通り抜けたときの流れ方(速度場、速度分布)による(吸い込みノズルや吹き出しノズル周りの流れのこと)のですが、ここでは省略します。

雨が吹き込むのは、風上にある風の入り口付近です。入り口から入った風は、例えそれが複数の入り口、出口でも、絶対に出口から出て行きます。また、吹き込みが問題になるのは、吹き込んでくる風にのって雨が侵入するからです。ということは、同じ風量でも窓を大きく開けておく方が勢いは小さくなるので、雨の吹き込み量は抑えることができそうです。軒のあるところなら、ある程度の風速があっても吹き込みは防げるでしょう。あとは、窓全開でも許容できる風速になるように、風の風量をコントロールすることです。

すでにお話ししたように、損失は圧力差を生みます。風の風量は残った圧力差で決まるのですから、損失をどこで発生させるかは風量には関係ありません。ということは、この損失を、風の出口で起こしてやればよいのです。

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梅雨どきの換気方法、雨の吹き込みを低減、防止するには。。。

家全体の風の流れを考えて、風の出口の窓などの開口面積を小さくしてあげること。風の吹き込み口は、あまり狭くしないでできるだけ大きく開いてあげること。

いかがでしょうか。

まぁ、そのときの家の外の風の向きは、天気予報の風向風速を気にして決定してください。その経験を活かしながら決定してください。うまくいけば、雨で少し冷えた風を利用して、風を通しながら、梅雨の1日をエコに過ごせるようになるかもしれませんね。