ストッキングを長持ちさせる一方法について ~ 機械工学的発想に必要な分析能力
さっさと結論を知りたい方は、ページの一番下に飛んでください。
機械工学が一般社会にどうやって貢献しているんでしょうか。主には、工業製品として世の中で使用されるものを生産する、その過程で活躍しているものです。
その活動を支える技術者に求められる能力は、課題に対する分析能力です。分析能力といっても一体何だろう、というふうに悩む人が昨今。分析をきちんとする能力は、短時間で解決策や必要な技術の絞り込みに役立ちます。この作業は、一つの課題を解決する作業の中で、あらゆるステージ、あらゆるスケールで網羅するように求められます。分析を短時間でおおなうためには、問題の切り分けが必要です。そのためには、対象とする問題の構造を理解する必要があります。それは、物理的な構想や、機械ならば内部構造も必要です。最近の機械システムでは、扱っている現象や部品の特性、電子デバイスなどではさらに多くの情報が必要です。したがって、分析能力に長けるためには、幅広い知識が必要になります。知識を習得するモチベーション(動機)は好奇心や関心です。したがって、物や現象に興味を示さない人には決してこの能力は付きません。
簡単な事例として、今回は女性の悩みであるとされているストッキングを長持ちさせる方法です。
ストッキングは、安価なものだと100円から入手できますが、通常は一足1000円前後します。品質や使い方、活動している場所や個人のお手入れなど、様々な要因によって簡単に伝線を発生してしまい、廃棄される運命にある工業製品です。指の爪のやすり掛けをさぼっていたり、かかとのカサカサがひかかったり、履くときにうっかり手の指の爪で引っ掛けたりすれば、一回も使用しないうちにゴミ箱に直行します。準備ができて家を出ても、慌てて自動車に乗ったりすると、そんな配慮もなく設計した機械技術者のおかげて、プラスチック部品の角やポルトの角にひかかって伝線してしまいます。職場でも、板金でできている机などのオフィス家具にも油断禁物。あらゆるところで伝線してしまう危険が潜んでいます。女性の気苦労も大変なものです。
全国で、ワーキングウーマンを中心に女性の皆さんが一年で消費するストッキングはどれくらいの数なのでしょうか。たとえば、日本靴下協会に統計資料があります。
2016年の数字だけを抽出してみましょう。男性はストッキングをあまり履かないことから、男性の消費量の参考値として紳士用ソックスの生産数を示すと、約3200万足です。ちなみにこれに対して、婦人ソックスは倍以上の7160万足です。この数字を参考基準として以下の数字を見ます。
婦人タイツ 900万足
ショートストッキング 2300万足
シームレスストッキング 240万足
パンティストッキング 10600万足
シームレスタイツ 1500万足
合計 15490万足
平均1000円で換算しても1500億円市場です。もちろん、これらのうちいくらかは輸出され(誤差の範囲)、またいくらかは海外から輸入されていますが、そこは目をつぶっておきます。実は、パンティストッキングの生産量は、2008年(15430万足)に比べるとおよそ2/3に減少しています。また、安価なストッキングは相当数輸入されています(中国からほぼ国内生産量と同数)。これらは生活費にある程度圧迫していることも予想できます。経済的には非常に大きな数字と思います。重量はわかりませんが、石油製品でもあることを考えると、かなりの二酸化炭素排出量でもあり、環境負荷も大きいかもしれません。(いえ、現実は電力等エネルギーに比べれば微々たるものでしょう。)
このストッキングの消費量を機械工学的な発想から少しでも削減できれば、社会にいくらかは貢献できるのかもしrません。
では、ストッキングはなぜ破れるのでしょうか。ストッキングは敗れるので仕方がない、きちんと丁寧に扱えば、それなりに使用できるので構わない。そういう発想では、問題を解決しよう、という気持ちはわきません。モチベーションを持てない人は技術者には向かないと思います。自分には一見関係ないようなことですら、気になったら調べてみて、分析し、そこから何か方策を探ってみる。そのためにはいろんな幅広い情報を利用して、組み合わせて、何か対策を考え出す。パズル化ゲームを楽しむような気持が必要と思います。
上述のように、自分自身で対応可能な原因の一つは、足の爪に対する対策と考えられます。足のつめの手入れをしっかりすればよい、ではだめです。まず、人の能力に頼りすぎです。非常に丁寧な人であっても、状況によって対応にむらが出てしまうことも問題です。手段を投じれば、どのような人でもある程度結果が得られる手法が技術です。だとすれば、極端な話、違った爪でもなんとかできる方法があればよいわけです。
以上、前置きが大切。
100均で売っているフットカバーを履き、その上からストッキングを履くことによって、最もとがった爪から繊維を保護、指先からの伝線発生の確率を軽減することができるかもしれません。
なお、フットカバーの素材は少し厚みのある綿素材が、爪の角をマイルドにしてくれますので適していますが、綿素材の織り方によっては、繊維の細いメッシュであるストッキングに対して、マジックテープのように繊維が絡んでくっつくことがあるようです。あまり荒い織のフットカバーはかえって脱ぐときにストッキングを破ってしまいますので要注意です。100均領事館などで扱っている履きぐちシリコンゴム付きフットカバー(新入荷品はオールナイロンになって薄くなってしまいました)などがおすすめかもしれません。近所の100均でよさそうなものを見つけてお試ししたうえでご検討ください。