テーマ:高空発電
1980年にLoyd の理論が公表された高空発電は,2000年頃からにわかに現実化しました。
1915年に既にその発想はありましたが、素材の進歩などによって、一気に実現の可能性が出てきました.
※Loyd, Crosswind kite power(1980),J. Energy
2017年現在では,欧米、中国を中心に20社ほどが AWE利用のための会社、組織を立ち上げ,日本の大手企業も海外の企業に投資、協力しています。
日本では,本研究室の扱っていた WIG同様、規制が厳しく国内での普及には時間がかかるため、コスト的に事業としては見合わないようです。
高空発電は,地面境界層を超えた気流が安定している高空(おおむね 高度100m 以上)で,飛行体(カイトやグライダー)、あるいは気球,飛行船などによって,豊富な風力エネルギーを利用しようとするものです。
基本原理は簡単で,前者は,中学校で習った「仕事」のモデルと同じで,地上に置かれた発電機のプーリーに巻かれたロープを,風力によって展伸することによって,発電機を回転させるもの.後者は,高空に運んだ風力タービンによって,高空のエネルギーを利用しようとするものです。これらがハイブリッドになったものなど様々なアイデアがあります.
ただ、前者は,その運用が非常に秀逸で,飛行体のマニューバーによってさらに出力を増幅しているところです。マニューバーに必要な推力発生機構は水平軸揚力型と同じですが,発生した空気力は軸力として構造付加になるのではなく発電に使用されます。したがって,テザー(ロープ)の強度が許す限り、高速マニューバーを行うほどに(もっとも機動に必要な力に制限がありますが)出力を増大できます.そのいみで,高周速比域における水平軸タービンの欠点を見事に解決しています(もちろん揚抗比による限界はあります).
後者は,タービンを高空に進出させますので,基本的には洋上発電と似たものになりそうですが、2018年は高度300m で 数キロワットの発電を実施する予定になっているそうです。
そもそも紀元前から凧は飛んでいて,オットーリリエンタール、ライト兄弟が初飛行して10数年のちの1915年に,高空のエネルギー利用は発案されています。それほど新しい発想ではありません。
本研究室では,実機を製作運用する様な経費や人的資産がほとんどありませんので,カイトモデル実験は他大学にお任せし,現在国内では課題になっているカイトの制御(自動運用)について,超低予算で単純モデルで試行してみようと計画しているところです.流体工学、という狭義の範囲からは逸脱していますが,機械工学の中での流体分野として,工業応用を目指す応用工学課題として扱います。