設備:1.5m x 1.0m 25m/s 回流式低速風洞実験設備
風洞とは、一般に、高速気流内の物体に関する模型実験を行う装置です。
空力に関する模型実験では、模型を車両などに搭載し移動させる曳航式と、この風洞のような模型を固定して気流内におく方式があります。
風洞の発生する気流速度に対する能力の分類から、おおむね以下のように分類されます。
- 低速風洞(おおむね100m/s以下)
- 亜音速風洞(M0.3から音速)
- 遷音速風洞(音速前後 ±M0.3くらい)
- 超音速風洞(~M5)
- 極超音速風洞(M5~)
2020年も近い現在では、試験断面 1mx1mくらいで 50m/s 程度の能力を持つ風洞は、全国の大学でも珍しくなくなってきました。JAXA6.5m×5.5m 70m/s 低速風洞、もはや文化財である東京大3m 風洞、鉄道総研3m×2.5m 110m/s風洞、などを筆頭に民間建設会社や自動車メーカーなど、かなり多くの風洞が国内には存在しています。
本風洞実験設備は、1970年に大阪府が万博景気で潤っている時代に、当時の遷音速流が専門である宮井善弘教授が2ストラッド型島津製三分力天秤を組み込んだ低速風洞を企画し、自ら風洞本体を設計されたものです。通常 平置き にされる流路は、土地の制限から縦型に配置され、また、同様の理由で上流側の流路は助走部が極端に短く個性的な形状をしています。完成当時は、風洞も制御盤も屋外にあり、青空の下で毛布にくるまって計測を行っている写真が残っていました。測定部は、 1,000mm×1,500mm変形八角形断面、長さ1,500mmで、吸い込み式境界層排除装置、ベルト式移動地面走行装置を装備した、当時ではあまり他に類を見ない風洞設備でした。現在では、作成から40有余年を越え、大阪府予算縮小のため更新されないまま、特に計測部は電気的にもかなり老朽化してきています。また,本体も財政難のため大規模維持作業費が支出されません.
今となっては見劣りのする風洞ですが、それでも整流部へのハニカム増強などの改良を加え、現在では既存天秤に替えてロードセルを利用した本研究室製天秤による転換により、当初の計測精度を十二分に満たす装置となっています。さらに軽量化の利点を生かして、小回りの利く自主開発自動化測定システムの導入がなされているところです。
なお,2025年には運用を終える予定です。
主な風洞性能仕様:
形式 ゲッチンゲン型回流閉鎖式(半開放可)
境界層吸い込み および ベルト走行装置 付属
最大風速 約25m/s : 時速90 km/h ( 短時間 最大 約 28 m/s : 時速 100 km/s)
測定部 1,000mm×1,500mm変形八角形断面 ( 1.38 ㎡ ) 長さ1,500mm
縮流比 1.38 : 9.62 ( 1 : 6.97 )
なお、風車計測システムについては稼働・さらに改善中で、比較的詳細なデーター取得(200-250点:トルク,回転数,風速動圧)であれば、2~3ケース以上 /日で計測可能です。委託研究(風車特性計測:平均計測データ,各計測点時系列データ,ベクトル形式グラフファイル)であれば、施設使用経費(大学、支払い方法要相談)、基本技術料(兼業雇用契約または謝金) 10万円/日 を基準(応相談)にご利用内容、ご利用者様規模に応じて対応を検討させていただきます。 簡単な資料作成等につきましては、別途対応いたします[共同研究、受託研究]。
開発時、流体数値計算が注目されていた時期でもあり,また,トンネルの多い山陽新幹線沿線では,トンネル突入時に発生する衝撃波による騒音低減が問題になっており,数値計算結果により,先頭車両は突入時の断面積変化速度を緩和するために大きく傾斜した形状が採用され,また,営業速度300km/h 達成のため空力抵抗にも配慮され,ジェット戦闘機のような外観と航空機のような円筒断面の車体が人気を集めていたようです.車両下面もF1車両や海外のバスなどで採用されていたフラットなカバーが適用されていました.
非公式ではありましたが,この車両は,1994年ごろに本研究室の低速風洞において,バラスの飛散に関連し,運転席形状の異なる車両模型(新幹線500系電車900番台?:鉄道総研米原風洞技術センター、博多総合車両所、保存:2017現在)を用い,地面走行装置を利用した車両側面の風速の測定が行われました.同時に300系電車(リニア・鉄道館建設 展示:2017現在)模型の実験も行われました.
[2010/3/1]