設備:自主開発三分力天秤

自主開発三分力天秤

本研究室で維持管理している低速風洞には、島津製作所製の差動トランスとフィードバックコイルで構成される電磁石自動平衡方式の三分力天秤が設置されています。この方式は、天秤への荷重(力点荷重)にたいして、交流で位相を検知する差動トランスの出力を、直流によるコイルの電磁力による作用力を変化させることによって、常に天秤の傾きが一定に保たれたまま計測する仕組みです。この天秤本体は、本体フレームの剛性も重要なのでそれなりの重量がありますが、弾性特性が優れ経年変化も少なくバネ材料として優れた青銅銅片4枚でベースフレームにつり下げられています。

ある時期、不注意な学生が増え始め、それまで何十年と発生していなかったりん青銅板破断落下を複数回生じ、製造元である島津製作所にも修理技術を持った現役技術者が不在となり、自主修理を行っていました。しかしながら、計測も自動化が必要な時代となり、計測を代替できる動ひずみ計型荷重センサーも選択肢が広がったことから、島津製天秤を代替する三分力天秤の設計製作を行い、完成したのがこの自作三分力天秤です。

コスト削減とセンサーの置換性を確保すること。翼等の空力計測の特徴に対応するため揚力と抗力の感度を大きく差異を持たせられること、を要求事項とし、市販1軸荷重変換器を用いることを前提に三分力天秤を構成、設計、製作しました。一部、部品の不備(原因と対処方法はわかっている3点、固定ボルトのはめ合いの不備、揚力部固定部品の柔軟性による調整の手間、センサー取付部の非柔軟性による物理的感度設定変更の非柔軟性)がありますが、通常で使用するには計測精度や三分力分解能も設計計画通りで、元の天秤の精度と同等以上を確保し、電気的に安定し、計測データーの自動化が可能となったことで運用性も大きく向上しました。また、本体もアルミ合金製でコンパクトに設計したため、重量が大きく減少し、天秤の脱着も簡単になりメインテナンス性も向上しました。

本天秤の運用に伴って、メインストラッドも複合材化し、基本的には単独で作業ができるようにもなりました。